法人化適齢期です!会社設立9つのメリットと4つの注意点

「このまま個人事業主としてやっていくのがいいのか、法人化した方が良いのか・・・」

「会社設立をしてみたいけど、実際何が変わるんだろう・・・」

こんな疑問が頭によく浮かぶようになったら、ズバリ法人化適齢期だと言えます。

法人化のメリットは、

  • 信用力アップ
  • 税務上の効果
  • 仕事の拡大
  • 新規採用

など多方面に渡ります。

個人事業主ではできなかった取引も法人として会社設立をすると可能となることもあり、仕事の幅も売り上げも大きく変化し、仕事のやりがいも増えるでしょう。

この記事ではそうした法人化のメリットをそれぞれ易しく解説します。また、法人化にあたってはいくつかの注意点もありますので合わせて確認してください。

Contents

会社設立メリット1 取引先や仕入先から受けられるメリットとは

法人化した方が取引先や仕入先から信頼を得やすいというと、フリーランスでやっている人の中には「いや、自分は個人として仕事の能力や責任感を評価してもらっているから、法人かどうかはほとんど影響ないと思う」という感想を持つ人も多いでしょう。

確かに法人化しても人を増やさずに一人だけでやっている場合には、個人事業主の時代と実態は変わりないかもしれません。

しかし、現状維持で満足しているのなら別ですが、取引先を増やしたり1件あたりの受注単価を上げたりといった向上心を維持していくためには、法人化した方が信頼感アップにつながるケースもあります。

事例:振込先として登録をしてもらう場合

大手の案件を受注するときには俗にいう「口座を開く」(自分を企業の振込先として登録してもらう)という手続きがありますが、その際に個人事業主ですと口座が開けない場合もあります。

その場合は既に口座を開いている知り合いの法人を経由して仕事を受注するなどの方法を取らざるをえない場合もあります。もちろんその場合には中間マージンを取られてしまうこともあるでしょう。

事例:初めての取引の場合

対面上はあなたの個人としての信頼感を確認できても、WEBサイト上で物販サービスを行ったり、新規取引の窓口を開設する場合、初めての人は個人事業主よりも法人化されている方を信頼する傾向があるのは当たり前のことです。

こうしたケースが積もり積もれば、せっかくの飛躍のチャンスをみすみす逃してしまうということにもなりかねません。

会社設立メリット2 節税面で受けられるメリットとは

一般的に事業所得が500万円程度をこえた時に税制面で法人化したほうが有利だと言われています。

節税面のメリット 所得の分散ができる

個人の場合には事業の収入は全て個人の所得になりますが、法人になっていれば、配偶者や子どもや両親なども役員や従業員にすることもできます。

当然身内に対しても報酬を支払うことができますので、税金が一人に集中することを防げます。

所得税は累進課税がかなりきついので、所得が増えれば触れるほど収めなければならない税金の額は上がっていきます。しかし所得を分散しておけば低い税率で抑えたまま利益を処分することが可能になります。

また、法人内部に利益を内部留保しておくこともできます。

節税面のメリット 保険の費用計上ができる

生命保険料の一部又は全部が費用として計上できます。

国の保険以外にも何かしら民間の保険に加入している人がほとんどだと思いますが、その保険を会社の経費で落とすことができます。

個人事業主の場合には生命保険料は最大でも年間で12万円までしか認められませんが、法人では金額的な制限がありません。もちろん社長だけでなく、役員や従業員も加入することができます。

節税面のメリット 自宅の家賃も必要経費ができる

個人の場合には、自分の住んでいる場所を仕事場に使っていてもそこで発生する家賃を必要経費とすることはできません。

しかし法人化してしまえば、法人名義で住んでいるところを借りることができます。つまり社宅としてその場所を利用するときの家賃は法人の費用となるわけです。

また、これはもう少し儲かってきた時の話かもしれませんが、法人名義で不動産を買ってしまうこともできますので、賃貸契約だけでなく社宅としてマンションや一戸建てを買い上げてそこを仕事場として利用することも可能です。

節税面のメリット 退職金を費用計上ができる

個人の場合には、事業主自身に対する退職金は必要経費として認められませんが、法人の場合には退職金が費用として認められます。

自分自身が引退するというケースは考えにくいですが、配偶者や両親、子供などが事情によって会社を離れる場合にももちろん退職金や必要経費とすることが可能です。

  • 両親が自分の会社からリタイアするときに退職金を老後の資金の一部としてもらう
  • 子供が独立して起業する場合の起業資金にする
  • 奥さんが家庭での生活を楽しむための資金とする

など、様々な使い方が考えられます。

会社設立メリット3 融資や資金調達で受けられるメリットとは

金融機関との付き合いや資本金の増強などの場面でよりダイレクトに法人化のメリットを享受できます。

融資や資金調達のメリット 金融機関から融資を受けるとき

まず金融機関からの融資は個人事業と法人ではかなり違っていることに目を向けましょう。金融機関が個人に貸し付ける場合には、信用の担保とするのはその個人だけです。

その個人に信用力がなければ不動産などを担保とする必要がありますし、連帯保証人が必須になったりします。

法人の場合には、各種法人向けローンの審査の対象となりますので、ハードルがかなり低くなります。

融資や資金調達のメリット 資本金を第三者から募るとき

資本金を自己資金だけでなく第三者から募りたいという場合には、法人化は必須といえるでしょう。

なぜなら出資する人は配当や将来の株式上場によるキャピタルゲインなどを期待するわけであり、個人としてあなたを応援したいというわけではないからです。

第三者からの資金提供によって資本金の増額を目指す場合、

  • 会社としてどういった方針で利益を上げ
  • 会計を報告し
  • 将来設計をしているかを明確化

することが大切です。このためには法人化が必要になります。

会社設立メリット4 取引先から受けられるメリットとは

個人事業の場合の案件の獲得方法は、

  • 以前在職していた会社での付き合い
  • 知り合いからの紹介
  • クラウドソーシング

など限られた方法になってしまいがちです。

いわゆる新規案件を獲得しようとして、名刺を持って営業に回っても個人の名刺では訪問できる先も限られてしまいます。

せっかく新規に営業先を開拓しようとしても、結局のところ知り合いや以前の取引先からの紹介になってしまい、これではせっかく名刺を刷って外に出ることの意味がありません。

また営業を自分以外の人に代行してもらう場合、自社の名前が入った名刺が必要になってきます。

1件契約が取れたらその20%を支払うなどで、成果報酬で営業代行を委託すればノーリスクで新規の取引先が開拓できますが、そのときに個人事業主としての自分の名刺を渡すわけには行きません。

会社の名前の入ったその営業代行の人の名刺を用意することでこうした取引先の拡大施策も図れます。

会社設立メリット5 採用するときに受けられるメリットとは

採用の窓口は、個人事業主として開設している自分のホームページでもできないことはありません。

しかし自分が応募する側になることを想像してみればすぐ分かりますが、見ず知らずの個人の事業に協力したいと思う人がどれくらいいるでしょうか?

確かにあなたの個人としての力量を知っている人にとっては、個人事業主であろうと、法人の社長であろうとかわりはないのですが、知らない人にとって新しい職場にエントリーするということはあなた「個人」を選ぶことではなく、「職場」を選ぶことなのです。

そうした意味からも、知り合いを一本釣りするような採用でなく、オープンに人材を求めたい場合には法人化は必須といえるでしょう。

求人情報誌などに広告を出す場合にも掲載にあたっての審査があり、法人での申込みが一般的です。

会社設立メリット6 ピンチの時に受けられるメリットとは

ピンチの時のメリット 莫大な負債を負った場合

例えばあなた個人が莫大な負債や賠償責任などを負った場合、場合によっては個人事業主としてやっている事業の銀行口座や不動産、動産などの財産も差し押さえの対象となります。

例えば

  • 離婚した時の慰謝料
  • 交通事故などの過失責任による賠償金
  • 友人の事業の連帯保証人

などはこのケースに該当しますので、まったく想定しなくても大丈夫とは言えないことが分かります。

こうしたケースでは、逆境にあるあなたが将来頑張っていくための重要な部分が崩されてしまいます。

事業収入で目の前の負債や賠償金のケリをつけるだけで済んだ場合には、しばらく地道に仕事を続ければまた復活できますが、差し押さえなどで事業が立ち行かなくなり、収入や将来の仕事のベースとなる部分が崩壊してしまうわけです。

しかし法人化しておけば、法人名義で事業に使っている事務所や備品、設備などは差し押さえの対象になったりはしません。

もちろん銀行口座も凍結されたりすることはありませんので、目の前の嵐が過ぎた後もう一度自分の生活基盤、事業基盤を立て直し、発展させていくことも可能なわけです。

ピンチの時のメリット 死亡やケガを負った場合

あなた自身が不幸にして死亡したり仕事が継続できないほどの怪我を負ったりした場合にも法人化しておけば事業の継続は容易になります。

個人事業では代表者が死亡してしまうとすべての事業にかかわる財産も相続税の対象となりますので、相続税を収めるために事業に必要な財産を切り売りしなければならない事態もありえます。

しかし法人の場合には会社の財産には相続税がかかりませんので、事業を動かしていくノウハウさえ継承できていれば、残された配偶者や両親、お子さんが相続税を収めることなく会社の財産を使って事業を継続していくことができるのです。

また数年間、もしくは無期限に近い怪我などによる休職の場合にも、会社の代表印を信頼できる家族などの役員に預けて療養に専念することできますし、怪我が会社の業務遂行と関わっていたのならば会社から一定額の補償をすることも可能です。

会社設立メリット7 経営リスクを考えたときに受けられるメリットとは

個人事業から法人に移行することは、「無限責任」から「有限責任」へ移行することでもあります。

無限責任とは

無限責任というのは、事業の失敗について個人が無限に責任を負うこと

有限責任とは

有限責任とは会社法で定められた一定の範囲内で責任を取ればよいということ

例えば、個人事務所で金融機関から借入れをして事業に失敗してしまったら、個人の財産から負債を返済しなければなりません。またそこまでいかなくても、税金の滞納や仕入れ先への未払いなども個人の財産からなんとかしなければなりません。

法人の場合には、事業が失敗したときなどは会社の残り資産から負債を返済しますが、それ以上の負債の追求は代表者であったとしても個人には及びません。

有限責任のメリットとは

この「有限責任」のメリットは、大きく分けてふたつあります。

  1. 最終的に事業に失敗してしまった場合などでも、将来的にもう一度復活することができるという代表者に対するメリット
  2. 責任が出資範囲に限られるので、経営に直接タッチしない出資者からも資金を集めやすくなる

ということです。

有限責任のメリット1

社長個人が会社の借り入れなどに対して債務保証をしていなければ可能です。

ただし、まだ会社を立ち上げて間もない頃には会社自体の信用力があまりないので、社長の個人保証を金融機関から求められるケースが多いのも現実です。

ですので、会社を設立したらすぐに恩恵が受けられるメリットというよりは、将来において社長の個人保証がなくても会社の信用力をつけるための条件として、まず会社設立が必要だということになります。

有限責任のメリット2

会社設立後すぐに享受できるメリットです。出資を仰ぐにしても、「最悪でも出資金として出していただいた以上のお金が損することは有りません」ということを、出資者に明言することが可能です。

会社を設立して「有限責任」というベースを確立したほうが、自己資金以外の資金調達ははるかに容易になります。

会社設立メリット8 消費税納税から受けられるメリットとは

個人事業であっても売上が1000万円を超えれば消費税を納めなければなりません。これは利益ではありませんので、「自分にはそんな金額関係ないな」という数字ではないといえます。

例えば個人輸入ビジネスで売れ筋商品を探すことに成功したので仕入れを拡大し、仕入れ金額が月間100万円程度になった場合、全部売り上げることができれば年間で1000万円を超えてしまいます。

仮に利益が20%で月間の儲けが20万円しかなかったとしても消費税非納税の対象になりますので、利益の20万円から消費税を納めなければならず、利益はそこから目減りしてしまいます。

法人の消費税納税義務は「2期目の売上」が基準となります。

つまり実際に納めるのは3期目からでよいので、すでに売上が1000万円以上あるか、今期1000万円以上の売上になりそうなら、法人化するだけで2年分の消費税が免税されるということになります。

会社設立メリット9 赤字の時に受けられるメリットとは

15年間連続で黒字達成!無借金経営!といった起業成功例もありますが、多くの会社は徐々に収益の体制を確立していくものです。

万年赤字体質は問題がありますが、事業を立ち上げたばかりの頃は利益の変動も大きく、赤字と黒字を繰り返すということもありえます。

そんな時個人事業主でも青色申告をしておけば、赤字損失を3年間繰り越すことができます。赤字の翌年に利益が出た場合には税金がその分免除されますので、黒字の時には資金的に余裕ができます。

つまり3年の間に黒字体質に会社の軌道を乗せれば良いということになります。

法人化すれば、この青色申告3年という損失の繰越猶予が9年間になります。仕組は同じで、赤字の翌年に利益が出た場合には税金がその分免除されますので、法人化してから9年のうちに黒字体質を確立すればよいことになります。

日銭稼ぎではなくきちんとした事業計画を作り、9年後には順調に利益を上げられるような中期的な視野に立った経営戦略を実行したい場合などは、この税制上の法人化のメリットは非常に大きいと言えます。

会社設立の4つの注意点とは

ここまで9つの法人化メリットを見てきましたが、最後に法人化の注意点にも目を向けておきましょう。

法人化すると、これまで個人事業主としてやってきたいくつかの恩恵が受けられなくなるケースもありますのでチェックしてみましょう。

注意点1 社会保険の加入義務

個人事業の場合には従業員5人未満の場合は社会保険の加入義務はありません。

しかし法人化すると報酬を受けている人が一人でもいれば強制的に社会保険の加入義務が生じます。

具体的には役員や従業員に対する社会保険料の半分を負担する必要が出て来ます。

注意点2 お金の使途が厳密になる

個人事業主の場合には事業用の口座であっても、個人の出費のためにお金をつかうことは問題となりません。

しかし法人の場合には、解説した法人用の口座から「ちょっと現金が足りないから」などの理由で私的なお金を引き出して使うことはできません。

仮にやってしまうと、給与や貸付金となり税金がかかったり返済義務が生じます。

注意点3 接待交際費が費用にならない場合もある

個人事業の場合には、接待交際費は全て必要経費として認められます。

しかし法人の場合には接待飲食費の額の50%相当額までしか交際費としては認められません。

注意点4 税務申告の手間が増える

個人事業でも確定申告や、青色申告がありますが、法人の税務書類の作成は個人のものより複雑で作成の手間もかかります。

また税務申告書類の他にも、勘定科目内訳書や法人事業概況書などの作成が義務付けられています。

これらを税理士などに代行してもらうことももちろん可能ですが、その場合には費用もかかってきます。

まとめ

以上、会社設立のメリットと注意点を確認してきました。

メリット・デメリットそれぞれありますが、よりビジネスを大きくしたり、収益の基盤を強化したりしたい場合には、メリットがデメリットをはるかに上回るということがおわかりいただけたと思います。

せっかく立ち上げたビジネスを大きく展開するためにはやはり会社を設立して法人として進めていくほうが大きな展開が見込まれます。

「そろそろ法人化した方が良いのかな・・・」と普段思っている人は、これを機会にぜひ自分の事業を法人化した場合のメリットを確認してみましょう。

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