今すぐ知りたい!正しい商標登録の方法とメリットデメリット
初めて「商標登録をしよう」と考えた時に「何から始めてよいのか」が全く分からないと思います。
もちろん繰り返し商標登録をしている人であれば、問題ないのですが、初めての方は、どんな分野でも戸惑ってしまうものです。
特に「商標登録の方法」などは、普段の生活ではなかなか接点が少ない分野ですし、知り合いに「商標登録をしたことがある方」も少ないので、知るすべが少ないのです。
また
- 「そもそも商標登録が自分でできるのか?」
- 「特許事務所や弁理士さんに依頼しないとできないものなのか?」
と言うことも知らないことの方が多いです。
もしかするとその前に「商標登録と言うけれどそもそも商標とは何だろう。商標登録とは何だろう?」と言う疑問もあるかもしれません。
今回は
- 「商標とは何か?」
- 「商標登録とは何か?」
から始めて、
- 「商標登録の方法」
- 「自分でどこまでできるのか?」
- 「特許事務所・弁理士に依頼するとどこまでやってくれるのか?」
- 「それぞれのメリット、デメリット」
- 「商標登録に費用はどのくらいかかるのか?」
までを説明していきます。
ぜひ「商標登録」について知りたい方は、お役立てください。
商標登録の方法を知る前に!
商標登録の方法を知りたいという方はあまり商標登録自体に慣れていない場合も多いかもしれません。
そこで「商標登録の方法」を知る前に「そもそも商標登録って何?」と言う部分から説明していきたいと思います。
なぜなら商標登録の方法を知っていても商標登録について(商標について知らないと)間違った判断をしてしまうかもしれないからです。
そもそも商標とは?
商標とは一言でいうと「事業者が自己の取り扱う商品や自己の提供する役務を他人の商品や役務(サービス)と区別するために商品または役務について使用する標識」のこととなります。
もう少し分かりやすくするために消費者からの目線で見てみましょう。
消費者が商品やサービスを購入する時に、「どの事業者が製造や提供しているのか?」を知りたいはずです。
さらに「その商品やサービスの質はどのくらいまで期待していいのか?」が分かったほうがよいはずです。
商標(商標登録)は、それを認識するための制度です。
例えば、江崎グリコのお菓子の「ポッキー」は商標登録がされています。
「ポッキー」と聞けば消費者は「江崎グリコのお菓子だ」と分かるし「江崎グリコのポッキーなら、このぐらいの品質はあるな」と分かるのです。
そのために「ポッキー」は登録商標であり、同じ区分では、同一の(または類似の)商標は登録できなくなっているのです。
このように書くと「文字」だけが商標かと思われるかもしれませんが、商標の範囲は広いです。
対象は、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」となります。
これも分かりやすく言うと文字だけでなく、図形や記号などもそうです。
平成26年の商標法改正により、上記に加えて色彩や音なども商標として登録できるようになっています。
商標登録とは何をするものなのか?
商標は分かったものの商標登録とは何なのでしょうか?
文字を見ると単純に「商標を登録する」と言う意味ですが、もう少し具体的に
- 「どこに登録するのか?」
- 「それによって何が変わるのか?」
などを見ていきましょう。
商標は消費者などがその商品やサービスを認識する時に便利なものなので、同じ商標がたくさんあっては混乱します。
そこで商標を登録した場合、商標権を与え独占的に使用する権利を与えられるのです。
商標登録がしてあれば、他社(他者)は、同じ商標を登録できません。
もし商標登録をしてあるものと同じものを他社(他者)が使用していれば、使用差し止めや損害賠償を請求できます。
なお商標権は先願主義ですので、早く商標登録をした表が優先されます。
この商標を特許庁に申請し、商標権が認められて商標原簿に登録するまで流れを「商標登録」と言い、その商標のことを「登録商標」と言います。
なお商標権の存続期間は設定日から10年間です。
しかし商標権者の更新登録の申請により更新することができるので、更新し続ければ永続的に商標権を持つことができます。
商標登録は誰ができるのか?また、特許事務所・弁理士とは?
では、商標登録はだれができる(だれがする)のでしょうか?一般的に、特許事務所や弁理士に依頼するイメージが強いと思います。
まずは特許事務所と弁理士について説明していきます。
特許事務所と弁理士とは
弁理士とは知的財産に関するスペシャリストであり、
- 特許
- 実用新案
- 意匠
- 商標
などの事務手続を代理することができる国家資格の保有者のことを指します。
弁理士の主な仕事は、
- 「特許、実用新案、意匠、商標に関する特許庁への出願などの手続についての代理」
- 「知的財産権に関する仲裁事件の手続についての代理」
- 「特許や著作物に関する権利、技術上の秘密の売買契約、ライセンスなどの契約交渉や契約締結の代理」
- 「特許法等に規定する訴訟に関する訴訟代理」
などです。またその弁理士が開設している事務所のことを特許事務所と言います
多くの場合商標登録の出願は、特許事務所や弁理士に依頼することになります。
しかし自分自身でも特許の出願はできます。
例えば弁護士がいなくても自分でなら裁判を起こせるし、税理士がいなくても自分でなら決算書の作成はできるのと同じです。
もちろんスペシャリストに依頼する方が、安心感はありますが、その分、費用がかかることになります。
参考までに特許庁のホームページです。 https://www.jpo.go.jp/indexj.htm
※この中の「制度・手続」のタブから「商標」を選択すると、出願の手続きが載っています。
商標登録の方法とは?
自分自身でも商標登録はできますが、基本は「自分で行う場合」も「特許事務所・弁理士に依頼して、その方々が行う場合」も同じ流れになります。
それを踏まえて「もし自分が行うならどうしよう」と言う視点や「この流れなら依頼した表がよいかな」などを判断しようという視点などで、商標登録のステップを見ていきましょう。
商標登録までのステップ1 調査
登録しようとしている商標を調査することから始まります。
これはすでに商標登録された登録商標は、重複して登録することができません。
自分が商標登録しようとしているものが、すでに商標登録されていないか調査する必要があります。
既存の登録商標を調査するには、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供しているホームページ「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」を使うと便利です。( https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage )
ここでは
- 特許
- 実用新案
- 意匠
なども調べることができますが、プルタブを「商標」に合わせて自分の調べたい商標を入力することで結果がでます。
ここで「区分」と言うものがでてきます。
これはその商標登録する時に、その商標がどの区分に属しているかも申請します。
なお特許庁に支払う特許印紙代は、区分によって違いますし、区分が複数に分かる場合はその分の特許印紙代がかかります。
商標登録のステップ2 書類作成
商標登録のステップの中で書類作成が一番大変なところになります。
ここが大変がゆえに、特許事務所・弁理士に依頼する場合も多いのです。
特に文字だけの商標登録であればよいのですが、商標登録は、立体、色彩、音なども対象になります。
その場合にどのように書類を作成していくのかはかなり難易度が上がります。
これらも、特許庁のホームページに記載のある通りに作成していくことになります。( https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/syutugan_tetuzuki.htm )
ここでの書類の作成でミスをすれば、登録までに時間がかかる場合もありますし、そもそも登録が不可になる可能性もあります。
また登録ができたとしても、登録の内容が自分の目的(商標によって商品やサービスをも守るなど)に合致せず、それが達成できなければ意味がありません。
形式に則りながら、しっかりとした商標登録ができるように作成していく必要があります。
また「区分をどうするのか?」もこの時点で決める必要があります。
区分を増やせば登録時の費用だけでなく、更新時の費用も多くかかるので、長期的な部分まで考慮に入れて考える必要があります。
商標登録のステップ3 出願
書類が整ったら特許庁への出願をします。
そうするとまずは「方式審査」と言うものが行われます。
これは
- 出願書類の不備がないか
- 手続きの要件を満たしているか
などをチェックする審査のことです。
あくまで形式面の審査ですので、商標自体の内容の審査ではありません。
この「方式審査」で形式にミスがある場合は、補正期間中に補正をしなければなりません。
原則30日以内ですので出願したら終わりでなく、すぐに対応できるようにしておく必要があります。
これらは特許事務所・弁理士に依頼した場合は、書類作成になれているのであまり起きないかもしれませんが、自分で書類作成、出願した場合に多く出てきやすい部分ですので注意してください。
この部分で手間取ると登録までの期間が延びてしまいます。
商標登録のステップ4 審査
「方式審査」が通ったら、次に「実体審査」になります。
この「実体審査」が本格的な審査になっていきます。
ここで、
- 同一の登録商標がないか
- 類似商標がないか
- 要件を満たしているかどうか
などを審査されます。
なお新しい商標の分野(色彩や音声など)や複雑な商標の場合、審査に時間がかかる場合もあるようです。
こうして「実体審査」が行われて、合格すると「登録査定」と言う通知が来ます。
逆に審査に不合格の場合は「拒絶理由通知」が来ます。
しかし「拒絶理由通知」が来たからと言って、絶対に商標登録出来ないかと言うとそうではありません。
意見書と補正書を提出することによって、拒絶理由をクリアできれば「登録査定」になることもあります。
拒絶理由をクリアできなかったり、意見書や補正書を出さず何の対応もしなかったりすれば、不合格となり商標登録はできないことになります。
「拒絶理由通知」が来たらすぐに対応できるようにしておくべきです。
商標登録のステップ5 登録
「登録査定」の通知が来たら、商標登録をすることになります。
通知を受け取ったら原則30日以内に、登録手続きと登録費用の支払いを行います。
ここで区分数に応じて登録費用を支払うことになります。
また10年一括納付と、5年の分割納付が選ぶことができます。(5年の分割納付の場合は5年後に後半部分を支払いをするのを忘れないようにする必要があります。)
これらが完了すると特許庁から「登録証」が届き、商標権を得ることになります。
出願から登録証を得るまでの期間は、出願する商標の種類によっても違いますし、補正などがあるかによっても違いますが、一般に半年から1年かかると言われています。
商標登録を自分で行うか?特許事務所・弁理士に依頼するか?
では自分で商標登録をやるか、特許事務所・弁理士に依頼するかを考えて行くことにしましょう。
それぞれにメリット・デメリットもあるので、それらを説明していきます。
商標登録は自分でどこまでできるのか?
商標登録は自分で行うか、特許事務所・弁理士などのスペシャリストに依頼するかのどちらかです。
一般の人は登録手続きの代理はできませんので、スペシャリストに依頼しないのであれば自分でやるしかありません。
例えば資格を持っていない人が、他の人の商標登録を報酬を受け取って行うことはできないのです。
商標登録のステップの「調査⇒書類作成⇒出願⇒審査⇒登録」をすべて自分で行うことになります。
特許庁のホームページを見ても、法令や手続きがかなり複雑ですので、難易度は高いと思います。
しかししっかりと読み解けば、手続きはできないことはありません。
また商標の種類によっても、難易度は変わると思います。
文字だけの場合と新しい商標(色彩や音など)の場合では、難易度も変わると思います。
また
- 普段から書類作成になれているかどうか
- 法律用語などになれているかどうか
- 官庁への対応になれているかどうか
でも大きく変わると思います。
それぞれの置かれている立場(申請内容や自分自身の経験など)によって、難易度は変わると思いますが、すべて自分でできないことはありません。
特許事務所・弁理士に依頼するとどこまでやってくれるのか?
商標登録のステップの「調査⇒書類作成⇒出願⇒審査⇒登録」の各段階で、特許事務所・弁理士に依頼すれば、対応をしてくれます。
「調査」も商標の種類によっては、様々な角度から調査を行う必要があります。
この場合にも特許事務所・弁理士の経験が調査に生かされます。
次の申請書類の作成はしてもらえるので、手間が省けるのと、「方式審査」で不備が起きる可能性は少なくなります。
次の「実体審査」でも補正書や意見書を出す場合にも対応していただけます。
いつ「拒絶理由通知」が来るかが分かりませんし、対応できる期間が決まっていますので、特許事務所・弁理士に対応してもらうと助かります。
最終的な登録や更新の手続きを依頼できます。
また特許事務所・弁理士によっては違いはありますが、基本は調査や書類の作成だけでなく、商標についてのアドバイスもいただけます。
商標登録に関しての一連の流れについては、すべて対応していただけるということになります。
自分で商標登録をするメリット・デメリットとは?
自分で商標登録をするメリットは何と言っても費用を抑えることができることです。
自分でやっても特許事務所・弁理士に依頼しても、特許印紙代などの費用は掛かるものの、特許事務所・弁理士への費用は、自分で行えば必要なくなります。
逆にデメリットはその分自分自身に手間がかかってしまうことです。
手間がかかるだけでなく出願の審査が不合格になれば、何も残らないことになります。
また審査に合格し商標権を得ても、商標の範囲や区分が間違えば、せっかくの権利が有効でない結果になることもあります。
このようにならないように、自分で出願する場合は気を付ける必要があります。
特許事務所・弁理士に依頼する場合のメリット・デメリット
メリット
特許事務所・弁理士に依頼するメリットは、手間が省けるという点です。
それに加えて調査・出願の段階で「登録できるか・拒絶されるか」の判断が経験上、知識上できやすいという点です。
出願したけれど商標登録できないということが少ないのです。
デメリット
デメリットしては費用がかかります。
特許事務所・弁理士によって費用は違います。
以前は一律だった時期もあるようですが、現在では金額は自由に設定できるので、「調査から登録まですべてで費用がかかる場合」もあれば、「調査費用は無料の場合」や「成功報酬制の場合」など様々です。
商標登録することによって得られる効果と、かかる費用との費用対効果を考える必要があります。
特に「拒絶理由通知」がきて、補正書や意見書を出す場合などはその対応の他のための追加で料金がかかることもありますので、どこにいくらかかかるのかは最初に把握しておくべきです。
(逆に、すんなり登録できれば、ここでの費用は必要がなくなります。)
まとめ
商標登録は、
- 自分で行うか
- 特許事務所・弁理士などのスペシャリストに依頼する
ことになります。
それぞれにメリット、デメリットがあります。
商標登録をする前にそもそも商標登録の目的をはっきりさせる必要があります。
単に、
- 「商標登録を自分でしてみたい」だけなのか」
- 「今後多くの商標登録をするので、最初は手間がかかっても自分で出来るようにしていきたい」
- 「費用はできるだけ抑えたいから自分で行う」
それとも、
- 「商標登録をすることが目的のなかで最重要で、手間(自分の時間や作業量)を抑えたい」
- 「自社の商品、サービスを守るためにしっかりとした商標登録をしたい」
その目的によって自分で行うべきか、特許事務所・弁理士に依頼すべきかが判断をつく方も多いと思います。
ここまで商標登録のすべての流れやメリット・デメリットを見ると、「余計にどちらにしたよいか迷う」と言う方もいるかもしれません。
しかし長々と説明してきましたが、ポイントをまとめると
- 「費用」
- 「自分の手間」
- 「目的」
の3つがはっきりしていれば、「自分で行うか」「特許事務所・弁理士に依頼するか」を決めることができます。
つまりは自分の状況が「どのような状況か?」によって判断することになります。
「商標登録は自分でもできるし、特許事務所・弁理士に依頼することもできるが、状況によってよい方を選ぶべき」と言うことになるのです。
ぜひ自分の状況に合わせて、どちらかを選んでください。