ズバリ教えます!株式会社設立の必要な資本金
「起業しよう」とか「会社を設立しよう」と考えた時に、まず考えることの一つに「資本金をいくらにしようか?」と言う点があります。
本文の中でも説明しますが、現状では資本金の額は自由に決めることが出来るようになりました。自由になったのは良い面もありますが、「自由になったがゆえに、余計に、どうしようかと迷ってしまう」と言う方も増えることにもなりました。
そこで、今回は、「適切な資本金の設定方法」をお話していきます。
ぜひ、「起業しよう」「株式会社を設立しよう」「資本金をどのように設定しようか?」と考えている方は、読み進めてください。
ズバリ、資本金をいくらにするべきなのか?
「資本金をいくらにするのか?」と言うのは、会社を設立する時に、迷うことが多いトピックスです。
もし、あなたが迷っているのであれば、「スバリ、資本金は、300万円以上、1000万円未満」にしましょう。
会社を設立=起業する時には、「どのように売上をあげるか」「どのようにして経費を抑えて利益を出すか」など検討すべき事がたくさんあります。そのような時に、資本金の額ばかりに囚われていては、他の事がおろそかになってしまいます。
もちろん、業種や業態によって、必要な資本金は違うはずです。それで自分で適正な資本金額を導きだせるのであればその額にすべきですが、特に明確な方針がなく、どうしようか迷っているような状態であれば、「300万円以上、1000万円未満の範囲の中で自分が出資できる額」が目安となるのです。
この章では、「なぜ迷っているのであれば、300万円以上、1000万円未満にするのか?」を説明していきます。
法律上は、最低いくらの資本金が必要なのか?
では、法律上、「資本金の額はいくら以上にしなさい」と決まっているのでしょうか?
2015年現在は、資本金は、1円以上であれば、いくらに設定しても良いとされています。つまり、「自由」です。
ここで、「確か、株式会社の資本金は最低1000万円以上だったのでは?」と思う方もいると思います。これは、2006年までは、債権者保護の観点から、旧商法で最低資本金が1000万円と決められていたからです。
2006年に新会社法が施行された時に、最低資本金制度がなくなった(資本金が1円からで良くなった)ので、現状では、1円以上であれば自由に設定できます。
尚、参考までにお話すると、2003年から2006年までは、最低資本金規制特例制度と言う法律があり、一定条件を満たせば、5年間だけ1000万円以下(=1円以上の資本金)で良い時期もありました。しかし、これも新会社法が施行されたことによって、最低資本金は1円になったので、この最低資本金規制特例制度も廃止となりました。
先にも書いたように、この資本金を「自由」に設定できると言う点が、逆に「いくらにしようか?」と言う迷いを生むことになってしまっています。
本当に資本金を1円にしたらどんなデメリットがあるのか?
法律上では、1円以上の資本であれば良いとされていますが、もし1円で資本金を設定したらどうなるのか?
会社は存続できません。そもそも、資本金とは、「出資者が出資した金額」を言います。経営者が100%出資して株式会社を設立するのであれば、「自己資金の額」とも、その事業を始める際の「元手」とも言えます。
「自己資金・元手が1円で経営が出来るかどうか?」と考えてみると分かりやすいはずです。まず、会社の設立資金さえ捻出できないこととなります。その後の経費もかけられないのです。これでは、事業はできません。
会社の設立費用ですら20万円前後はかかります。プラスして、事務所に掛かる費用、パソコンや机やイスなどの備品などを考えていけば、一定の元手が必要となります。
起業当時は、資金が厳しいので、費用は抑えるべきです。自宅を事務所に使ったり、今まで使っていたパソコンや机などをつたったりして費用を抑えましょう。それでも、初期に100万円程度はかかるかもしれません。
では、「初期に100万円かかるので、資本金も100万円で良いか?」と言うと、そうではありません。広告費や仕入れ代など毎月かかる費用があるからです。すぐに売上が上がれば良いですが、起業時は認知度も低いため、そう簡単ではありません。
経営をしていく上での運転資金が必要なのです。この運転資金をどのくらいかと言うのも見通しを立てる必要がありますが、ここでは、月30万円を6か月ほどの余裕を見たいとします。
すると、初期投資の100万円と180円(30万円×6か月)で280万円ほどの資本金が必要となるのです。このように、資金繰り面から見ても最低限、約300万円程度は欲しいのです。
他の人から見た資本金を意識すべきか?
資金繰り上での資本金額を見てきましたが、他の人から見た資本金の額も意識する必要があります。
資本金は出資者が出資した金額ですので、他の人から見れば多くの出資を集めることが出来る会社と見られることになります。
企業の安心度・安全度は、様々な見方がありますが、「資本金が大きければ大きいほど、安心度が高い会社」としてみる場合があるからです。
その見方をしている企業であれば、企業間の取引を始める時に相手先の企業が、資本金の額が「○○円以上でなければ取引をしない」と考えます。
例えば、資本金100万円のA社が、B社と新規取引をしたいと考え、営業をしてきました。そこで、B社に取引を依頼したが、B社では、「新規取引先は資本金300万円以上でなければならい」と言う規定があり、「そもそもA社とB社との取引はできないと断られる」ということになります。
こう考えると、資本金は多ければ多いほど良いのですが、起業時に多くの自己資金も持っていることは少ないはずです。
では、最低限として、どのくらいなら安心とみてもらえるのでしょうか?これは一概には言えませんが、ここで一つの目安となるのが、最低資本金制度です。
先ほど、「2006年までは株式会社の最低資本金は1000万円」と伝えましたが、その当時は、株式会社のほかに有限会社と言う会社形態もありました。
2006年までは小規模の事業を行う企業に即した会社形態として有限会社があり、その最低資本金は300万円とされていたのです。
現行の会社法では、有限会社は設立出来ませんが、取引を検討する他社から見れば、「以前の有限会社程度の安心度は欲しい」と考えることも想定することが出来ますので、一つの目安として以前の有限会社の資本金を参考にしても良いのです。
もちろん、業種によっては、その事業をするにあたって「資本金が○○円以上でなければ、事業をする資格を与えない(許認可をしない)」と言う場合もあります。
例えば、一般労働者派遣をする会社を設立時に許可を受ける場合は、2000万円以上の資本金は必要です。(もう少し詳しく言うと、資産の額から負債の額を引いた額が事業所ごとに2000万円以上必要となります。設立時には、負債はありませんので、資本金が2000万円以上必要と言うことになります。)
このように、明確な基準があれば、その資本金額となりますが、迷っているであれば、前節の資金繰り面からも、今節の他社との取引面から見ても、300万円程度は必要と考えられるのです。
金融機関との取引と資本金
また、銀行との取引でも資本金の額は重要となります。会社設立時に資本金(自己資金)ですべて賄えることが出来るのであれば、金融機関からの借入をする必要はありません。でも、事業内容によっては、多額の資金が必要であり、借入の必要がある場合もあります。
その時に借入の額に比べて自己資金が少なければ、金融機関は融資をしません。業種・業態の違いや担保の有無、保証人の有無によって状況は変わりますので一概には言えませんが、金融機関からの借入の予定があるのであれば、借入と自己資金の比率は考えておくべきです。
また、起業時点では借入をしないにしても、事業を続けていく上で、数年後に借入が必要となる場合も多いです。その時には、金融機関の融資判断は、資本金の額ではなく、貸借対照表の「純資産の部」の額を見ます。
「純資産の部」とは、細かい話を抜きに売れば、「資本金と利益剰余金の合計」です。利益剰余金とは、過去の利益の積み重ねです。と言うことは、赤字が続けば、「純資産の部」はマイナスになります。この状態を債務超過と言います。
「純資産の部」は自己資本とも言いますので、純資産の部(自己資本)が充実していればいるほど、安定している会社としてみることが出来ます。言い換えれば、総資産に占める純資産の部(自己資本)の比率が高いほど、安定している会社と言えます。
なお、総資産に占める自己資本の比率の事を自己資本比率(=自己資本÷総資本)と呼びます。この自己資本比率は一般的には、40%以上あれば、倒産しにくい会社と言われます。
よって、金融機関も純資産の部が充実している会社であり、自己資本比率の高い会社の方が融資しやすいのです。
しかし、起業後にすぐに黒字になればよいですが、創業数年は赤字になる場合も少なくありません。上記のように、「資本金+利益剰余金=純資産の部=自己資本」ですので、資本金が少ないと自己資本比率も低くなり、さらにひどければ債務超過にもなりかねません。
金融機関は、自己資本利率が低ければ融資をしにくいですし、債務超過であれば、融資を出すことはほぼありません。
よって、創業後の融資の事も考えれば、資本金を多めにしておいた方が有利なのです。
資本金が多すぎる場合のデメリットはあるのか?
あまりに資本金の額が少なすぎると、デメリットがあることは理解できたと思います。では、手元資金がたくさんあるからと言って、資本金の額を多くすることにデメリットはないのでしょうか?
資本金(または自己資本)は多ければ多いほど安定している会社と見られるのですが、実は、資本金を多くし過ぎた場合にもデメリットはあります。
日本の法律は、中小企業と大企業の分類を資本金の額で行うことがあります。そして、中小企業の支援するための法律や施策が多くあるので、資本金が大きすぎると、その恩恵を受けられない場合もあるのです。
資本金が大企業の部類に入り、中小企業の対象の優遇制度が受けられないとか、税金が高めになってしまうなどの事が考えらます。
例えば、最近では、吉本興業が資本金を1億円に減資しようとしているとニュースになりました。これは、資本金1億円以下であれば、中小企業とみなされ法人税の軽減などの優遇措置を受けることが狙いではないかと言われています。
設立時に1億円の出資を受けるケースは稀なので、もう少し身近な例を見ていきます。
例えば、設立時に資本金が1000万円未満の企業については、設立1期目、2期目の消費税の免税事業者となります。逆を言えば、1000万円以上の資本金であれば、1期目から納税事業者となってしまうのです。
よって、迷っているのであれば、資本金は1000万円未満に抑える方が良いのです。
資本金をコントロールする方法とは?
それでは、元手の額をそのまま資本金にしなければならないかと言うとそうではありません。一部、資本金の額はコントロール出来ます。
資本金の額を調整するには、元々の出資の額を増減させることもできますが、それ以外の方法では、簿記上の計上方法によって、資本金額を増減させることも出来るのです。
簿記では、出資金のうち、2分の1までを資本金に組み入れしないことが出来ます。そしてその額を資本準備金と言います。
例えば、出資を1500万円しても、すべてを資本金にして「資本金1500万円」とすることもできますし、「資本金750万円、資本準備金750万円」とすることもできるのです。
つまり、決算書上の資本金の額は、ある程度まではコントロールできるということです。上記のように、資本金の額によってデメリットが想定される場合は、最初から一部を資本金にせず資本準備金にすることで、デメリットを回避することもできるのです。
業種、業態によって資本金は変えるべきなのか?
上記まで見てきたとおり、資本金は、1円以上あれば自由となり、起業する人は迷いが生まれるようになりました。それでも、「事業の元手」と言う本来の資本金の意味を考えれば、ある程度の金額は必要となります。全く元手が掛からない事業と言うのは、ほぼ存在しないからです。ほとんどの事業は、元手がなければ、開始することも、継続することも出来ないはずです。
では、「ある程度の金額」とは一体どのくらいなのでしょうか?
これは、業種、業態によって違うので、一概には言えません。一概に言えないからどうでも良いというわけではありません。自社の経営計画に基づいて、どのくらいの元手が必要なのかを検討してから会社を設立する必要があります。
例えば、ほとんどの元手が掛からないサービス業であれば、資本金は少なくても良いのですが、工場や倉庫などを立てるような製造業であれば、資本金が少なければそもそも経営が出来ません。
また、同じ業種でも必要な元手の額は変わってきます。例えば、同じ運送業でも、トラックの配車を専門にする会社と自社でドラバーを多く抱え、トラックや倉庫を持っている会社とでは必要な元手の額は変わります。
つまり、同じ業種でも業態によって資本金額は変えるべきなのです。このように考えていくと、自分が設立する会社の状況や将来像を想定して必要な元手を導き出し、その元手の額から適切な資本金額を導き出すことになります。
この適切な資本金額を導き出せず、迷っているのであれば、まずは「300万円以上1000万円未満」目安で考えてみる位と言うのがこの章のまとめです。
会社設立時に、資本金を設定する手続き方法
上記までで、資本金の額の設定は分かってきたとして、意外に次に躓くのが、「どのような手続きをすれば良いのか?」と言う点です。
手続き関係の重要度は高いのですが、起業時期は、その他にもやるべきことが多いので、あまり時間をかけていられません。よって、起業をする方がスムーズに手続き出来るように、資本金の設定関係の手続きについて、説明をしていきます。
定款の作成
株式会社を設立する時に定款を作成します。定款とは、会社の根本規則を記載したものです。定款には、法律上、絶対に記載にしなければならない事項(絶対的記載事項)があります。
では、資本金の額は絶対的記載事項なのかと言うとそうではありません。絶対的記載事項の中で、資本金関連のものとしては、「会社設立に際して出資される財産の価額またはその最低額を記載すること」となっています。
つまり、「資本金の額を記載する方法」と「定款には最低限の額だけを決めておき、後に資本金を決める方法」があります。どちらの方法を取ったかを定款に記載すればよいのです。
また、「発起人」も絶対的記載事項の1つです。発起人とは、出資者の事です。定款の雛形などで、発起人欄に、「割当する株式数」と「払込金額」を記載する例がよくあります。
この時に、上記の、「定款には最低限の額だけを決めておき、後に資本金を決める方法」を取った場合、まだ決まっていないので、発起人欄にも「割当する株式数」と「払込金額」は記載出来ません。
この場合、発起人の名前と住所は絶対的記載事項ですが、「割当する株式数」と「払込金額」は絶対的記載事項ではありませんので、記載しなくても良いのです。
現物出資もできる?
会社設立時の資本金は、通常は現金で出資を行いますが、現物出資と言う方法もあります。現物出資とは、現金以外の財産(例えば、不動産や車両など)を出資に充てることです。
現物出資は、資本金を多く見せるなどの不正を防止するために様々な規制がされています。
例えば、会社設立時に現物出資するには、定款に記載する必要があります。現物出資の記載は、絶対的記載事項ではなく相対的記載事項であり、記載をしないと現物出資は効力を持たないこととなります。
また、通常、裁判所選任の検査役の評価が必要となります。しかし、これは現物出資の総額が500万円以下に抑えれば、検査役の調査は不要とすることが出来ます。
1人で出資する場合と、複数人で出資、どちらが良いのか?
会社設立する時に、1人で出資する場合と、複数人で出資する場合があります。「どちらが良いのか?」と言う疑問も生まれます。
メリット、デメリットを考えていきます。メリットとしては、資本金(自己資金)が多く必要な場合に、1人で出資するよりは、複数人から出資を受けた方が多くの資金を手元に置いた状態で事業をスタートすることが出来ます。
デメリットとしては、経営の独立性が失われる可能性があるということです。株式会社は出資比率によって、権限が変わります。いくら創業者でも出資比率が少なければ、経営を自由に行うことが出来ないのです。
まず、1株でも株式を保有していれば、株主となり、株主総会の出席が出来ます。経営側からいえば、株主への説明責任が発生します。
また、株式の3分の2以上を保有していれば、株主総会の特別決議(定款の変更、取締役の解任など)が可能です。逆に言えば、他の人に3分の1以上、保有されると特別決議が阻止される可能性が出てしまいます。
次に株式の2分の1以上を保有していれば、株主総会の普通決議が可能です。逆に、2分の1以上の株式を保有していないと普通決議が出来ません。
例えば、友人と2人で起業して株式を半分ずつ保有している場合、後に2人が対立すると、何の決定もできなくなるという状態に陥るおそれがあります。
以上のように、設立時の資金負担を考えれば、複数人で出資をすることも考えられますが、その時に、出資比率を慎重に考えておかないと、後々の経営に大きな影響を与えることになります。
資本金を払い込む
定款を作成し、公証人の認証を受けたら、資本金を払い込むことになります。設立登記する際に、実際に払い込まれたことを証明する必要がありますので、銀行口座に払い込みをします。
定款作成時に、「資本金の額を記載する方法」で選択したのであれば、すでに資本金の額は決まっています。
しかし、定款作成時に、「資本金の額を記載する方法」によらず「定款には最低限の額だけを決めておき、後に資本金を決める方法」で記載した場合には、この「資本金の払い込み」までには、資本金を決定しておく必要はあります。
ここで注意点があります。資本金の払い込みは定款の認証を受けた後でなければなりません。定款の認証を受ける前に払い込みをした金額は資本金として認められないのです。
また、払い込む口座は、発起人の個人の口座になります。これは、登記後でなければ、法人名義の銀行口座はできないので、発起人個人の口座に払い込むことになります。
資本金は、登記事項の1つでもありますので、払い込みが済んだら、通帳のコピー、払込証明書とその他必要書類を持参し、登記を行います。
設立後、資本金を変更(増資)するにはどうするのか?
資本金の額によるメリット、デメリットはお伝えしましたが、「後々、資本金を変更できるの?」と言う疑問のある方もいるかもしれません。
結論を言うと、資本金の変更はできます。追加の出資をして、設立時に設定した資本金より増やすことを増資と言います。また、資本金を減らすことを減資と言います。
増資の種類
では、資本金を増やす変更(増資)から見ていきましょう。増資をするということは、追加で株主に出資してもらうということになります。
よって、追加で出資する株主が誰かによって、何種類か増資の種類があります。
- 特定の第三者に出資してもらう「第三者割当増資」
- 現状の株主に出資してもらう「株主割当増資」
などがあります。
「公募増資」は、一般の投資家から出資を募るので、なかなかハードルが高いです。つまり、上場企業でもない限り、公募増資は難しいと考えても良いです。
「第三者割当増資」は、取引先や幹部役員、従業員などに割り当て出資してもらう方法です。
ここで気を付けるべき点は、上記で説明した出資比率(持株比率)です。例えば、「目先の資金を得るために、取引先企業に出資してもらったら、過半数の株式を握られ経営権が取引先に移ってしまった」などのようなことが無いように慎重に第三者割当の金額(増資後の持株比率)を検討する必要があります。
「株主割当増資」は、現状の株主に現状の持株比率に応じて出資してもらう方法ですので、増資前後を比べて持株比率は変わりません。
よって、持株比率の維持を目的とするのであれば、株主割当増資をします。しかし、既存の株主に出資してもらう場合でも、増資後の持株比率が変わるのであれば、第三者割当増資になります。
例えば、現状、「Aさん800株、Bさん200株」を持っていて、「100株の増資」を行う時に、「Aさん80株、Bさん20株の割当をするのであれば、株主割当増資」となり、「Bさんのみに100株の割当をするのであれば、第三者割当増資」となります。
増資の手続き方法
「第三者割当増資」と「株主割当増資」の各増資の手続きについて譲渡制限会社を想定して説明していきます。
「第三者割当増資の大まかな流れ」
- 募集事項を決議する(原則、株主総会の特別決議)
- 対象の第三者への通知をする
- 対象の第三者からの申し込みが行われる
- 株式の割当決議をする
- 対象の第三者から払い込みが行われる
- 増資登記をする
「株主割当増資の大まかな流れ」
- 募集事項を決議する(原則、株主総会の特別決議)
- 株主への通知をする
- 株主からの申し込みが行われる
- 株主から払い込みが行われる
- 増資登記をする
以上にように、第三者割当増資と株主割当増資の流れの違いは、「株式の割当決議の有無」です。これは、第三者割当増資の場合は、持株比率が変わってしまうので、その承認のために行うものです。
「株式の割当決議」は、「取締役会がない会社の場合、株主総会決議」「取締役会がある会社の場合、取締役会決議」「定款に別段の定めがある場合は、その定めによる決議」となります。
また、増資の際の注意点がもう一つあります。それは、定款で定められている発行可能株式総数です。これは、会社が発行する株式数の上限を定めているものです。
増資の際に、発行可能株式総数を超えるようであれば、増資の手続きの前に、定款の変更及び登記を行う必要があります。
減資の手続き
次に、資本金を減らす変更(減資)の手続き見ていきます。増資では株主への影響を考えましたが、減資では、株主にプラスして債権者への影響も考えることになります。
「減資の大まかな流れ」
- 減資の決議する(原則、株主総会の特別決議)
- 債権者の保護手続きを行う(1か月以上)
- 異議を述べた債権者への対応
- 増資登記をする
上記にように、減資の際は債権者の保護が重視されるので、一定の時間がかかります。債権者保護手続きは、「官報に公告をし、かつ知れている債権者には個別に催告をする」必要があります。その期間が1か月以上と決められているので、増資に比べ、減資の方が、時間がかかることになります。
まとめ
上記までで、「株式会社を設立する時に、資本金を適切に設定する方法」を説明してきました。主なトピックをもう一度確認してまとめとします。
- そもそも資本金は、事業を始める際の元手
- 資本金は、1円以上であれば自由に設定できる
- 業種・業態によって必要な元手は変わるので必要な資本金も変わる
- 必要資金を自ら導き出す必要がある
- それでも迷うのであれば、「300万円以上1000万円未満」を目安にする
- 資本金が少なすぎると、企業間の取引や銀行融資に不利になる場合もある
- 資本金が多すぎると、中小企業向けの優遇制度が受けられない場合もある
- 資本金の額は、定款に記載しない方法も取る事が出来る
- 資本金は、原則、現金だが、現物出資もできる
- 出資比率(持株比率)は経営に影響があるのでよく検討する
- 資本金は、設立後、変更(増資、減資)が出来る
以上にように、様々な資本金に関するトピックを説明してきました。
重要度も高く、多岐に渡るので、難しく感じるかもしれませんが、経営の中で常時出てくるトピックではありません。設立時、増資・減資時などの要所でしか出てきません。
よって、迷うのは、経営計画などがしっかり出来ていない場合です。経営計画がしっかりしていれば、それに応じて、資本金を決定できるので、迷うことはなくなります。
会社設立時に、計画を立てて、実行していくことは、資本金を決めるためにも必要なので、ぜひ、経営計画を立てて資本金の設定で迷わないようにしていきましょう。