法人化に必要な申告手続きとは?決算書や算定基礎のポイント
「個人事業がスムーズに進み、法人化を検討している」
企業法人化を行うときには、事前準備や設立後の申告手続きが欠かせません。
いざ法人化したものの、何から始めて良いかわからない…。
そうならないためにも、法人化に必要な申告手続きを確認することが大切です。
「決算書」「算定基礎」はもちろん、「労働保険」「給与支払報告書」も、細かくポイントを押さえておきましょう。
Contents
企業法人化のメリット
事前準備や申告手続きの流れを知る前に、まずは企業法人化のメリットを簡単に押さえましょう。
大きなメリットとしては、
- 「税金が安くなる」
- 「決算対策がしやすい」
- 「退職金制度が使える」
- 「福利厚生制度が使える」
- 「取引先からの信用が集まる」
の5つです。
税金が安くなる
個人事業主で所得が900万円を超える状態だと、所得税は33%徴収されてしまいます。
法人税は経常利益によって税金が決まるもので、経常利益を0~400万円に押さえれば約20%の税率になります。
400万円~800以下であっても、約25%の税率にしかなりません。
あなたや家族の役員報酬として支出を出せば、経常利益を抑えて税金が安くなります。
また、給与所得控除が受けられるため、個人事業主より大きな金額が控除できるようになることが特徴です。
例えば、500万円の利益があったとしたなら、個人事業主は年間65万円の控除が受けられます。
役員報酬を500万円にしているなら、年間154万円の控除を受けられるようになります。
そのため、法人化をすれば税金が大幅に安くなるでしょう。
決算対策がしやすい
法人化しておけば、自由に事業年度が設定できるため、決算月をコントロールできます。
利益の予測を付けてから決算対策できますし、繁忙期と決算期をずらすことも可能です。
個人事業主は事業年度を変えられないため、収入と支出上で税金が計算されます。
格段に決算対策がしやすくなり、スムーズな経営ができるでしょう。
退職金制度が使える
給与所得が使える法人では、今の給与を下げながら退職金として受け取れるようになります。
お金がもらえる時期が変わるだけと感じるかも知れませんが、退職金を利用すると税金を下げられることがメリットです。
退職所得=(退職金支給額-退職所得控除)×1/2で計算されるため、所得税が大幅に安くなります。
個人事業主の場合、退職金で税金対策ができないため、かなり大きなメリットと言えるでしょう。
福利厚生制度が使える
福利厚生として社会保険や社宅制度が使えるため、所得税や社会保険料を抑えることができます。
給与を上げてそれぞれが個人で支払っていると、その分だけ無駄なお金を支払うことになるでしょう。
しかし、社宅を福利厚生として使用すれば、給与天引き+損金算入で支払えます。
余計な税金がかからないので、法人化した方が良いでしょう。
取引先からの信用が集まる
法人化している企業は、組織としてのイメージが強いため、取引先からの信用が得やすいです。
個人事業主の場合、法人と比べてあまり信用されないことが現状です。
もちろん金融機関からの評価も変わってくるため、融資にも大きく影響してきます。
社会的な信用にも繋がるため、事業が大きくなる目処が立っているなら、法人化を検討すべきでしょう。
法人化前の事前手続き
法人化を行うときには、8つの準備が必要になります。
- 発起人・取締役の印鑑証明書(発酵から3ヶ月以内)
- 会社実印(代表者印)
- 定款(紙の場合4万円の収入印紙が必要)
- 決議書(発起人の決定書)
- 就任承諾書
- 払込証書面
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
株式会社だと定款を公証役場に持っていき、認証手続きをしてもらう必要があります。
事前に
- 「定款案」
- 「必要書類」
- 「認証日」
- 「手数料」
- 「受け取り用媒体」
を確認しておきましょう。
手数料は約5万円になりますので、忘れないように注意してください。
法務局での登記申請
本店の所在地を管轄している法務局に行き、登記申請をしなければなりません。
登記申請を行うときには、資本金の1,000分の7にあたる登録免許税が必要になります。
例えば、資本金が3,000万円ある場合、21万円の費用が発生するということです。
ただし、下限は15万円になっているため、最低でも15万円を用意しておきましょう。
法人設立後に必要な申告手続き
法人は設立してからもさまざまな申告手続きをしなければなりません。
それぞれ見落としがないように、確実にチェックしておきましょう。
税務署の申告手続き
必須
- 法人設立届書:設立から2ヶ月以内
- 青色申告の承認申請書:「設立から3ヶ月」「最初の事業年度終了日」の早い日付の前日まで
- 給与支払事務所等の開設届出書:給与支払い開始から1ヶ月以内
- 源泉所得税の納期の特例承認に関する申告書→特例を受ける月の前月末まで
任意
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却四川の償却方法の届出書
法人設立届書はあなたの会社を税務署に知らせるための書類で、提出しないと税金の書類が受け取れません。
2ヶ月以内に記入し、
- 「定款のコピー」
- 「登記事項証明書」
- 「株式名簿」
- 「設立時貸借対照表」
を添付しましょう。
提出するときは、
- 「法人設立届書」
- 「定款のコピー」
- 「登記事項証明書」
- 「株式名簿」
- 「設立時貸借対照表」
の順番で提出してください。
青色申告の承認申請書を提出すると、青色申告が可能になります。
複式簿記で記入しなければなりませんが、メリットが多いため、必ず提出しておきましょう。
また、所得から給与制度を取り入れるために、給与支払事務所等の開設届出書は確実に出してください。
税金の金額が変わってきますので、忘れないようにしておきましょう。
年金事務所の申告手続き
- 健康保険・厚生年金保険新規適用書:設立から5日内
- 算定基礎届:加入してから毎年4~6月に提出
社会保険に加入するためには、年金事務所で手続きを行う必要があります。
健康保険・厚生年金保険新規適用所は、「登記事項証明書」「貸借対照契約書のコピー」が必要になります。
算定基礎届は毎年計算して、年金事務所に提出する義務があります。
実際に支払った給与から計算してください。
労働基準監督署・公共事業安定所の申告手続き
労働基準監督署に提出するもの
- 労働保険 保険関係成立届:雇用から10日以内
- 労働保険 概算保険料申告書:雇用から500日以内
従業員を雇う場合、労災保険に加入しておきましょう。
保険関係成立届には登記事項証明書の添付が必要なので、忘れないように添付しておきましょう。
労災保険に入っていれば、従業員の負担を軽減できるようになるため、必ず行いましょう。
雇用人数が10名を超えた場合、就業規則届の提出が必要になるため、注意してください。
公共事業安定所に提出するもの
- 雇用保険 適用事業書設置届:設置から10日以内
- 雇用保険 被保険者資格取得所:資格取得から翌月10日以内
適用事業書設置届には、
- 「保険関係成立届」
- 「概算保険料申告書」
- 「登記事項証明書」
- 「事業所の貸借対照表」
- 「法人設立届」
- 「事業所宛の郵便物」
が必要になります。
事業所宛の郵便物は、ちゃんとそこで働いているかを証明するためのものです。
法人実印を持って行けば、その場ですぐに記入できるため、必ず持っていきましょう。
まとめ
個人事業主と比べて数々のメリットがある法人ですが、法人を設立するためには、設立前後で書類の用意や手続きが必要になります。
専門的な知識が必要になってくるため、どうしても後回しにしてしまいがちです。
しかし、提出期限が決まっているので、事前に準備をしておかなければなりません。
「手続きをしておけばよかった」と後悔しないためにも、細かく内容を知ることが大切です。
あなたも正しく法人化するために、ぜひこの記事を参考にしてください。