今すぐ解決! SWOT分析の落し穴はこうやって回避する!
SWOT分析では
- 「強み」(Strength)
- 「弱み」(Weakness)
- 「機会(Opportunity)」
- 「脅威(Threat)」
のシンプルな4つの要因を軸に、今後自分が取るべき戦略を探ることが可能になります。しかし、この有名なフレームワークにははまってしまいがちな落とし穴もあります。落とし穴にはまらないために、ポジショニングマップを併用する効果的な使い方を伝授します。
Contents
SWOT分析の最大の落とし穴とは
SWOT分析を実際にやってみた人はある時点で気がつきますが、このフレームワークは知らず知らずのうちに敵を打ち負かすためのレッドオーシャン戦略が前提となっています。
「SWOT分析」はもともと自社の「強み」「弱み」を軸として分析しますので、「相手に勝るかそれとも負けるか」という発想を何の疑いもなく使っています。
- 自社と他社とを比較して相手の弱みをこちらの強みで徹底的に叩きのめす
- 相手の強みを市場機会の変化を上手に利用して叩き潰す
といった発想です。
アップル社を例にSWOT分析の図を埋めてみよう!
それでは最初に事業に対して
- 「強み」(S)
- 「弱み」(W)
- 「機会(O)」
- 「脅威(T)」
を洗い出す作業をしてみましょう。
「強み」(S)と「弱み」(W)を埋めてみましょう
「あなたの会社の強みは何ですか」
「あなたの会社の弱みは何ですか」
と聞かれるシーンを思い浮かべて、真っ先に出てくることをそのまま埋めれば大丈夫です。
外部要因の「機会(Opportunity)」や「脅威(Threat)」をまず洗い出してそこから強味と弱味を導き出す方法をもありますが、それはまずこの図を埋めた後に「クロスSWOT分析」で行いますので、最初は思い浮かんだことを埋めてみましょう。
「機会(O)」、「脅威(T)」 を埋めてみる
- 「機会」
「チャンス」「きっかけ」と置き換えて考えてもいいです。
「あなたの会社の製品が市場に受け入れられるチャンスはどこにありますか?」
「あなたの会社のサービスが爆発的に普及するきっかけは何ですか?」
と尋ねられたと想像してみてください。
- 「脅威」
「ライバルに負ける」
「売上が落ちる」
とイメージしてください。
「あなたの製品がライバルに負けてしまう場面はどんな時ですか?」
「どんなことが起きると売上が落ちてしまうでしょうか」
これらの質問に答えると例えばこんなふうになるでしょう。
iPhoneの洗練されたデザインやブランド力がアップル内部の武器であり、通信インフラが整備されたり料金が下がったりすることは外部的なチャンスです。一方でデザインが盗用されてコピー製品に悩まされる中国市場や、金額が高いために新興国で苦戦するなどの要因も抱えています。外部的な脅威としてもスマホ市場全体が飽和状態にあることや、ライバルのAndroidの攻勢などがあります。
アップル社を例に「クロスSWOT」をやってみる
ここまでで「内部環境」と「外部環境」の軸に沿った現状の整理ができました。
しかし、これだけでは現狀を確認しただけで終わってしまいます。「だからどうなの?」と会議で突っ込まれてしまう場面です。
そこで次に「クロスSWOT分析」を使って戦略の方向性を探ってみましょう。
先ほどの図との違いですが、【図1】では並列になっていましたが、 【図2】では縦軸に内部環境の「強み」(S)「弱み」(W)があって横軸に「機会(O)」と「脅威(T)」があります。
【図1】
【図2】
この結果、縦軸と横軸がクロスする4つの空欄ができました。この4つの空欄ができたことでそれぞれ以下の分析ができるようになります。
【強み × 機会】
「強みをチャンスに活かするにはどうしたらよいですか?」
【強み × 脅威】
「強みを活かして活路を見出すにはどうしたらよいですか?」
【弱み × 機会】
「弱みを克服して巻き返すにはどうしたらよいですか?」
【弱み × 脅威】
「最悪のシナリオを回避するにはどうしたらよいですか?」
アップル社スマホ戦略の場合には、例えば以下のように回答できるかもしれません。
【強み ×機会】
「ブランド力をさらに強化するにはどうしたらよいですか?」
⇒ 「iOSをより洗練されたかたちにバージョンアップしていく」
【強み × 脅威】
「Androidにどうやって打ち勝ちますか?」
⇒ 「Apple Musicなどの新サービスをリリースしていく」
【弱み × 機会】
「中国や東南アジアでのコピー問題をどうしたらよいですか?」
⇒ 「特許や意匠について今後も断固として法的手段に訴える」
【弱み × 脅威】
「スマホ市場が安いAndroidで飽和したらどうしますか?」
⇒ 「iPhone、iPadに変わる新しい製品を生み出す」
【弱み × 脅威】「iPhone、iPadに変わる新しい製品を生み出す」はスティーブ・ジョブズが健在だった頃は可能だったかもしれません。アップルはIBMとの戦い、マイクロソフトとの戦いなど何度もこの【弱み × 脅威】を跳ね返す奇跡的な成功を収めてきました。
企業が衰退していくきっかけは【弱み × 脅威】の戦略がうまく立案・実践できずに市場から退場していくというケースがほとんどです。
アップルがどのようにして今後「クロスSWOT分析」それぞれの項目に答えていくか、注目です!
SWOT分析をポジショニングマップと一緒に使えば落とし穴にはまらない!
マーケティングの世界で「ポジショニング」とは、市場での定量的な「マーケット・シェア」と顧客の持つ定性的なイメージである「マインド・シェア」で構成されています。
このうち定量的な「マーケット・シェア」は数値化できる競争優位ですので、先ほど見たレッドオーシャン戦略型のSWOT分析で見えてきます。ポジショニングマップを使うと、定量的な競争優位にも目を配りつつ、より定性的な自社のポジションイメージがつかめるのです。
ポジショニング作成の手順
- ポジショニングマップの軸を設定する
既存の競争の枠組みにとらわれず、音楽配信サービスなどのユーザーのベネフィットとなる項目を洗い出す - 市場の中での自社のポジションを埋める
新しい軸に従って、現在の競争相手と自社のポジションを配置する - レッドオーシャン型の競争部分(赤い楕円)がどこにあるかを見つけ出して対策を書き出す
「スマホ」を例にポジショニングマップを活用してみる
このマトリックスに、スマホを入れてみましょう。軸は「ブランド力」(定性)と「価格」(定量)にしてみます。
レッドオーシャン型のSWOT分析はポジショニングマップを使うとこうなる
この図ではプレイヤーを「アップル社」「SONYとサムソン」「中国ベンチャー」にしてみました。いまはそれぞれのポジションがうまく分かれていますが、競争優位分析型(=レッドオーシャン型)SWOT分析で、自社の強味と弱味を分析していくと以下のようになります。
SONYやサムソンが中国製品に対抗しようとして価格競争を仕掛けることにより、赤い部分の競争が激化します。
もしくは、iOSとAndroid陣営の戦いでは次のようになるでしょう。
競争優位分析型のSWOT分析は、これらの競争戦略を練り上げるときに役立ちます。
ブルーオーシャン型SWOT分析はこうやればいい!
かつてアップル社がCD全盛の時代にiTunesをリリースした時には、まさにこの状態でした。アップル以外に競争相手がいません。つまり、ポジショニングマップの縦軸に全く新しい価値観を設定することができれば、競争相手のいないブルーオーシャン型SWOT分析が可能になるのです。
そして、新しい軸を設定してしばらくブルーオーシャン状態であった市場もやがてライバルが戦略を模倣し、再び先ほどのタイプのポジショニングマップで確認した赤丸部分のようなレッドオーシャン型のSWOT分析が有効になってきます。
この流れをおさえてバランスよくSWOT分析を行うことで、レッドオーシャンだけに偏ったSWOT分析の落とし穴にはまることが回避できます。
まとめ
レッドオーシャン型にかたよりがちなSWOT分析を、現在注目のブルーオーシャン型でも活用するためのヒントでした。ポジショニングマップを併用することでみえてくる、SWTO分析の可能性を是非試してみてください。