みんなの起業の理由を教えて!成功する起業の4つのポイント
「起業」を考えたことはあるでしょうか?
「自由、高収入」、「リスク、苦労」など対極のイメージがあるようです。
話題性のある成功事例については公開されることが多いですが、実態はどうでしょう。
「どんな人がどんな理由で起業しているのか」について、調査結果を踏まえて
「起業を考える際に知っておきたいこと」から「成功するためのポイント」について考えていきましょう。
起業を志向している人とはどんな人でしょうか。
また、どんな理由で起業しているのでしょう。
2016年に公表された日本政策金融公庫による「起業と起業意識に関する調査」の結果からみていきます。
出典:「2015年度 起業と起業意識に関する調査」(2016年3月28日) 日本政策金融公庫 総合研究所
Contents
【実施要領】
- 調査時点:2015年11月
- 調査対象:全国の18歳から69歳までの男女 26万608人
- 調査方法:インターネットによるアンケート(スクリーニング調査と本調査の2段階)インターネット調査会社から登録モニターに電子メールで依頼し、ウェブサイト上の調査画面に回答者自身が回答を入力。
- 有効回答数:①スクリーニング調査:4万2,097件、②本調査:1,303件(起業家 407件、起業予備軍 460件、起業無関心層 436件)
調査結果
1.起業意識の分布
~事業経営経験のない人の17.7%が「起業に関心あり」と回答~
- 事業経営経験の有無:
「事業を経営したことがない」が87.7%と多数、「現在事業を経営している」は6.7%。
「現在事業を経営している」の割合は男性や年齢が高い人のほうが高い。
- 事業を経営したことがない人の起業への関心の有無:
「起業に関心あり」が17.7%、「以前は起業に関心があった」が11.9%。
女性よりも男性のほうが、また年齢が高い人よりも低い人のほうが、「起業に関心あり」の割合は高い。
2.属性の違い
~起業家は相対的に小さな企業から生まれている~
- 職業(起業家は開業直前の職業)をみると、起業家は「会社や団体の常勤役員」(8.1%)と「正社員・職員(管理職)」(32.9%)の割合が起業予備軍や起業無関心層と比べて高い。
- 勤務先(起業家は開業直前の勤務先)の規模は、起業家は「19人以下」の割合が38.8%と、起業予備軍の19.7%、起業無関心層の16.1%よりも高い→起業家は小さな企業から生まれる割合が相対的に高いといえる。
~起業家が仕事で重視することは年齢によって異なる~
- 年収(起業家は開業直前の年収)については、起業家は年収の多い人の割合が相対的に高い。しかし、年収の少ない起業家も存在し、とくに18~29歳の年齢層では「100万円未満」が15.5%、「100万円以上300万円未満」が32.8%と、5割弱は300万円未満である。
- 起業家が仕事をするにあたって最も重視することは、18~19歳は「収入」(49.2%)が最も高く、50~69歳は「やりがい」(47.0%)が 最も高い。30~49歳では「収入」「やりがい」「私生活との両立」が同程度である。
起業予備軍では、年齢が高いほど「収入」の割合が高くなる。起業無関心層では、年齢にかかわらず「私生活との両立」の割合が最も高い。
3.起業への関心
~起業家は身近に起業した人がいる割合が高い~
- 起業家は身近に「起業した人がいる」割合が起業予備軍や起業無関心層よりも高く、具体的には「父親、母親」(28.0%)、「両親以外の家族・親戚」(30.2%)、「友人・知人」(34.4%)の割合が高い。
- 起業・企業経営に関する授業を受けた経験は、起業家、起業予備軍、起業無関心層のいずれも、18~29歳が最も「受けた経験がある」割合が高い。また、18~29歳のなかでも、「起業・企業活動に関する講義・講演の聴講」「ビジネスプランの作成」「模擬会社・模擬店舗の設立・運営」は、起業家で受けた経験がある割合が高い。
~18~29歳が起業に関心をもつきっかけとなったのは友人・知人~
- 起業に関心をもったきっかけは、「勤務先の収入や昇進、仕事内容などに不満があった」(起業家は14.0%、起業予備軍は10.7%)の割合が高く、次に高いのは「友人・ 知人に事業を経営している人がいた」(起業家は10.3%、起業予備軍は6.3%)である。
- 18~29歳では、起業家は「友人・知人に事業を経営している人がいた」と「友人・知人から勧められた」の割合がとも13.8%で最も高く、起業予備軍は「友人・知人に事業を経営している人がいた」が7.4%で最も高い。
4.起業の準備
~起業家は相談できる相手がいる割合が高い~
- 起業について相談できる相手がいる割合は、起業予備軍の40.6%に対して起業家は74.2%であり、起業家のほうが高い。相談相手としては、起業家と起業予備軍のどちらも、専門家・支援機関よりも人的ネットワークにもとづく相手が多い。
- 起業家の18~29歳は相談できる相手がいる割合が84.6%で他の年齢層よりも高い。一方、起業予備軍の18~29歳では相談できる相手がいる割合は32.5%で他の年齢層よりも低い。若年層の起業において相談相手の存在は重要な要素になっているようである。また、起業家では年齢が低い層ほど「友人・知人」「先輩起業家」「家族・親戚」を相談相手として挙げる割合が高くなっている。
~「起業の手続き」や「アイデア・知識等」に関する情報を集めて起業している~
- 起業にあたって収集した情報がある割合は、起業家は59.7%、起業予備軍は26.9%である。起業家は起業予備軍と比較して、「起業の手続き」(起業家は41.8%、起業予備軍は13.2%)や「アイデア・知識等」(起業家は37.3%、起業予備軍は16.0%)に関する情報の割合が高く、起業時にはこれらの情報が必要になるといえる。
- 起業家について年齢層別にみると、「ビジネスのアイデアの見つけ方や評価の方法」「資金を節約して起業する方法」「仕入・流通・宣伝など商品等の供給に関する知識・ノウハウ」などは、18~29歳のほうが高くなっている。
5.起業の実態
~起業家が起業した業種と起業予備軍が起業したいと考えている業種には違いがある~
- 起業家が起業した業種と起業予備軍が起業したいと考えている業種を比較すると、起業家のほうが割合の高い業種は、「個人向けサービス業」(起業家は15.8%、起業予備軍は7.1%)、「建設業」(起業家は12.9%、起業予備軍は2.0%)などである。「飲食店・宿泊業」(起業家は5.2%、起業予備軍は13.7%)は、起業予備軍のほうが高い。
- 18~29歳で割合が高いのは、起業家では「個人向けサービス業」(21.9%)や「情報通信業」(14.1%)などで、起業予備軍では「飲食店・宿泊業」(13.8%)や「不動産業」(8.2%)などである。
~年齢が低い層ほど自己資金以外の資金を必要としている~
- 起業家が起業した際にかかった開業費用は「100万円未満」の割合が49.6%と約半数を占めているが、起業予備軍が見込んでいる開業費用で「100万円未満」が占める割合は5.3%である。
- 起業家の開業費用に占める自己資金割合が「100%(自己資金だけで開業)」の割合は72.7%で、起業予備軍が予定している自 己資金割合が「100%(自己資金だけで開業)」の割合は47.4%である。起業家と起業予備軍のどちらも、年齢が低い層ほど「100%(自己資金だけで開業)」の割合は低くなっており、若年層ほど自己資金以外の資金を必要としているといえる。
~自己資金の不足や失敗したときのリスクが起業していない大きな理由~
- 起業予備軍がまだ起業していない理由は、「自己資金が不足している」が48.4%と最も高く、次いで高いのは「失敗したときのリスクが大きい」の30.9%である。「その他」と「とくに理由はない」以外の理由を5つに区分したところ、「資金」(49.4%)に関する理由が 最も高いものの、「その他の不安」(45.2%)や「アイデア・知識・資格」(40.7%)に関する理由も高い。
- 「外部資金の調達が難しそう」と「起業について相談できる相手がいない」については、年齢が低い層のほうが高い傾向があり、若年層における起業の課題といえそうである。
まとめ:
- 18~29歳の若年層は他の年齢層と比べて起業家(2010年以降に自分で事業を開業し、現在も経営している人)の割合が低く、起業予備軍(経営経験がなく、現在起業に関心がある人)と起業無関心層(経営経験がなく、以前も今も起業に関心のない人)の割合が高い。
また、若年での起業を実現するには、起業について相談できる相手や自己資金以外の資金調達が重要であり、それらをサポートする取り組みが求められる。 - 18~29歳は他の年齢層と比べて起業家が生まれる余地が最も大きい。
全体(全国の18歳から69歳までの男女)に占める起業家(2010年以降に自分で事業を開業し、現在も経営している人)の割合は1.2%、起業予備軍(経営経験がなく、現在起業に関心がある人)の割合は15.6%、起業無関心層(経営経験がなく、以前も今も起業に関心のない人)の割合は61.7%である。
年齢層別にみると、18~29歳は他の年齢層と比べて起業家(0.7%)の割合が低く、起業予備軍(22.1%)と起業無関心層(68.3%)の割合が高い。 - 18~29歳の起業家は起業について相談できる相手がいる割合が高い。年齢が低い層ほど開業費用を自己資金だけで賄うという割合が低い。
起業について相談できる相手がいる割合は、起業予備軍の40.6%に対して起業家は74.2%であり、起業家のほうが高い。なかでも、起業家の18~29歳は相談できる相手がいる割合が84.6%で他の年齢層よりも高い。
一方、起業予備軍の18~29歳では相談できる相手がいる割合は32.5%で他の年齢層よりも低い。
若年層の起業において相談相手の存在は重要な要素になっているようである。
また、起業家については、年齢が低い層ほど「友人・知人」「先輩起業家」「家族・親戚」を相談相手として挙げている。 - 年齢が低い層ほど開業費用を自己資金だけで賄うという割合が低い。
起業家が起業した際にかかった開業費用は「100万円未満」の割合が49.6%と約半数を占めているが、起業予備軍が見込んでいる開業費用で「100万円未満」が占める割合は5.3%である。
開業費用に占める自己資金の割合は、起業家と起業予備軍のどちらも年齢が低い層ほど「100%(自己資金だけで開業)」の割合は低くなっており、若年層ほど自己資金以外の資金を必要としているといえる。
これらの調査結果から冒頭の「問い」を考えてみます。
まず、「どんな人が起業しているのか?について、
「小さな企業から生まれる割合が相対的に高く、身近に起業した人がいる割合が高い」
ということで、自分の能力・アイデアとは別に環境にも依存するようです。
大企業に在籍している人でも「起業」という選択肢を検討してもよいかもしれません。
次に、「どんな理由で起業しているのか?」についてはどうでしょう。
以下、上位3つです。
第1位 就業上の問題
勤務先の収入や昇進、仕事内容などに不満があった
第2位 ロールモデルの存在
友人・知人に事業を経営している人がいた
第3位 他者からの勧め
友人・知人から勧められた
今の会社に対する不満というのが最も大きいようです。この理由については予想通りかもしれません。
特に着目したいのは、「ロールモデルの存在」というところです。逆の見方をすると、身近に起業した人がいない場合、「自ら起業する」という発想が生まれにくいかもしれません。
また、この調査では以下のような「起業に必要な知識」について、勤務先で習得できるかも調査しています。
():起業予備軍の回答
- 製品・商品・サービスに関する知識や技術(29.9%)
- 仕入・流通・宣伝など商品等の供給に関する知識・ノウハウ(18.9%)
- 財務・税務・法務など事業の運営に関する知識・ノウハウ(15.1%)
- ビジネスのアイデア(21.5%)
この結果から推察すると、
「財務・税務・法務など事業の運営に関する知識・ノウハウ」
「仕入・流通・宣伝など商品等の供給に関する知識・ノウハウ」
といった事業経営に関する基礎的な知識は、起業するために個別に準備する必要があると言えそうです。
本章の最後に国別のデータを紹介します。日本での起業意識は最も低いようです。
出典:中小企業庁「平成29年度以降に向けた創業・起業支援について」(平成28年12月12日)
- 起業活動指数:アンケートを実施し、起業家・起業予定者であるとの回答を得た割合(%)、2013年または2014年
フランス:5.3%
英国:10.7%
米国:13.8%
ドイツ:5.3%
日本:3.8%
- 開業率:米国2011年、ドイツ2013年、その他2014年
フランス:14.0%
英国:13.7%
米国:9.3%
ドイツ:7.3%
日本:4.9%
起業によって得られるメリット・デメリット・リスクとは?
「起業する」ということはどういうことなのかを改めて確認してみます。
端的にいえば、「起業=新しく事業を始めること、そして事業=営利を目的として継続的に経営活動すること」です。
その活動形態の代表的なものが「会社設立」です(会社の種類もいくつかあります)。
そしてもう一つ、「個人事業主」として活動することも起業の一形態で、初期においては多くの方が採用されています。
つまり、「起業する」ということは、「新しく営利を目的として継続的に事業経営を行うこと」です。
そして、その形態には大きく
- 「会社設立」
- 「個人事業主」
の2つがあります。
この代表的な2つの「起業の形態」について、まずそれぞれのメリットとデメリットをみてみます。
個人事業主のメリットとデメリット
メリット
- 開業するにあたって特に条件もなく、届け出するだけでよい
→「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄税務署へ提出、A4一枚もので複雑な記載内容はない - 資本金など設立費用は不要
- 事業内容の変更や追加が自由
- 納税にあたっての申告手続きが容易(単式簿記による記帳でも可)
- 複式簿記による青色申告を利用すれば特別控除が適用される(最大65万円)
デメリット
- 一般的には信用度が低い印象を持たれる
- 金融機関からの借入などの取引面で不利になることが多い
- 無限責任を負うことになる
- 所得に応じて税率が上がる
- 事業主の立場では社会保険に加入できない
会社設立のメリットとデメリット
メリット
- 個人事業主と比べて社会的信用力が高い(資金調達などの金融機関との取引に有利)
- 責任が有限になる(ただし借入に個人保証を求められることが多い)
- 税率が原則一定
- 社会保険料の半分は会社の損金になる
- 青色申告をすることで税金面での優遇を受けられる(損金の繰越控除など)
デメリット
- 設立登記などの手続きが必要
- 設立費用がかかる(株式会社は最低24万円)
- 事業目的や定款、役員、代表の住所などの変更の際にも都度登記が必要(費用もかかる)
- 解散・精算をするにも登記が必要(費用もかかる)
- 複式簿記での記帳が必要、多くの場合税理士(費用)が必要になる
- 赤字でも法人住民税均等割分(7万円)の納付義務がある
- 社会保険への加入義務がある
上記からみてわかるように、「個人事業主」に比べて「会社設立」という選択肢は少し敷居が高いようです。
余裕が無いようであれば、まずは個人事業主としてスタートして、会社形態に移行するのが現実的でしょう。
実際には、まずは個人事業主として起業しているケースが半数以上あるようです。
税金面での違い
選択するにあたっては、特に税金面で違いが出てきます。
所得が500万円前後を超えてくると個人事業主よりも会社形態の方が安くなります。
個人事業主では所得が増えると税率も上がっていき、給与所得控除もありませんので、相対的に納税額が多くなります。
税金面だけを考慮すれば、この辺りが会社組織にする目安になりそうです。
もう一つの納税義務である消費税をみてみます。
個人事業主は開業から2年間の納税が免除され、その後に会社を設立した場合はさらに2年間(2期分)は免除となります。
よって、条件を満たせば個人事業主を経て、会社設立することで免除期間が(最大4年間に)延びることになります。
税金面での違いをみてきましたが、本質的なことは事業活動をする上で何かの制約を受けたり、マイナスにならないことです。
例えば、見込み客や取引先が「会社組織でないと取引できない」と言われるケースもあります。こういった営業面も含めて総合的に判断しましょう。
会社員(いわゆるサラリーマン)時代との違い
ここまで、「起業する」とはどういうことで、どんな「起業の形態」があるのかをみてきました。
次に、いま会社勤めをしているサラリーマンとの違いについて考えてみます。
起業のメリットは何と言っても、「自分で全てを決められること、自分のやりたいことができること」です。
会社に雇われているときには、自分の「役割」や「仕事のルール」などは基本的に与えられたものでしたが、起業すると全てを自分で決めることになります。
オーナー起業の社長ということですね。
つまり、望んでいない仕事はしなくてもよいわけですから、良いことばかりのように思えますが、その反面、「収入」にも責任が伴います。
毎月決まった給料を受け取れる「雇用者」と違って、自分の責任で稼がなくてはなりません。
会社員の立場から起業すると何がどう変わるのでしょう?項目ごとにみてみましょう。
自由と責任
自分の好きな仕事ができるようになります。これが最も大きな違いでしょう。
どんな仕事をするか、何故その仕事をするかも含めて自分で決めることが出来るようになります。
事業方針も自分で決めます。また、誰かに仕事を与えられるのではなく、仕事を自分で選ぶことができるようになります。
ただその反面、全て自分で責任を負うことになります。
仕事の領域
サラリーマン時代は、ある特定の職責と役割を担っていましたが、起業すると事業全体のことを考える立場になります。
また、そのような視野と意識を持つことが求められます。
勤務時間
サラリーマン時代のように、「勤務時間は何時から何時まで」といった規定・制限がなくなります。
ちなみに「労働基準法」は労働者を対象とした法律なので起業家には関係ありません。
場合によっては、働く時間が際限なく増えてしまう場合もあります。
収入・報酬
毎月一定の給料が入ってくる状態から、自分で稼いで、その中から自分の報酬を決めることになります。
サラリーマン時代では、売上げが落ち込んでも一定額の報酬が得られましたが、起業家の立場では、稼いだ範囲で自分の収入をコントロールしなければなりません。
会社組織の看板がなくなる
サラリーマン時代は所属する会社と肩書きで一定の信用が得られましたが、起業したら「自分」が看板になります。
一般的には、会社組織であっても規模の小さい「ベンチャー企業」では相対的な信用度が低いでしょう。
特に大企業のサラリーマンが起業する際には大きなギャップを感じることになります。
起業を考える際に知っておきたいこと
起業する際に知っておくべきこととして、起業主となる「心構え」と「習得すべきスキル」についてみていきます。
起業するにあたっての心構えと準備
会社組織の一員であるサラリーマンの立場と、全てが自己責任となる起業家では世界が全く違います。
パートナーや部下がいない間は特に自分一人だけで全ての責任を負います。
自分で稼がないと収入を得ることもできません。
- 何かを相談する
- 助言を受ける
- 報告をする
相手がいません。当面はこのような孤独な環境の中でビジネスを拡大していかなくてはいけません。
まずは第一の心構えは、起業すると決めたときの”志”を忘れることなく、継続して努力していく強い気持ちを持つことです。
そして、これまでの安定した収入(多い少ないではなく一定という意味)がなくなりますので、「家族の理解」が何より大事になります
「覚悟」と「強い意思」を持って踏み出しましょう。
起業するにあたって習得しておきたいスキル
サラリーマン時代では多くの人が限られた(決められた)役割を与えられてきましたが、自らが起業するとなるとまず第一に経営者に求められるスキルを備えなければなりません。
もちろん全てのことを自分一人でやれるわけではありませんし、する必要もありません。パートナーや外部の人材を活うまく活用しましょう。
起業家(いわゆる社長)が他に任すことなく自らが身につけておくべきスキル
スキルその1 ビジネスモデルを考える
まず、取り組む「事業の骨格」については自らが考え抜かなければなりません。いわゆる「ビジネスモデル」です。
ビジネスモデルとは個別の事業構造を決める拠り所となるもので、
- 顧客
- 提供価値
- 提供プロセス
- 収益構造
という基本的要素を定義したものです。
そして、これらは環境変化によって変わっていくことから適宜見直しが必要となってきます。
補足:
- 事業の利益は、上記4要素の掛け算で生み出される
- いずれか1つでも満たされない(ゼロかマイナス)とプラスにならない
ex.価値あるサービスであっても、対象顧客や提供プロセスを誤ると利益が上がらない
ex.提供価値、顧客、提供プロセスが最適であったとしても、どこで付加価値を回収するかという収益構造の設計が適切でないと継続的な利益を生むことは難しい
スキルその2 事業計画策定スキル
事業計画は、「何を、なぜ、どんな市場の誰に、どんな価値を提供するのか。それは、いつ、誰と、どんな方法で、どんな収益構造に基づき行うのか」を定義したものです。
先の「ビジネスモデル」を実行に移す計画です。
スキルその3 数字に関わるスキル
起業して自らが経営する立場になると事業活動の結果を決算書という形で数字にする責任を持ちます。
このような経理・会計の分野は今まで経理部などの専門部署に任せていて、あまり意識のなかった人はある程度のスキル習得が必要になります。
ただ、ここでいうスキルは「簿記の知識があって決算書が作れる」といった技術的なことではありません。
経営責任者として決算書などの数字が「読める」「理解できる」ことです。
特に決算書など会計基準に則った数字と実際のキャッシュとは別物ですので、「資金繰り」の観点からも数字を診る目が求められます。
仮に委託先の税理士が書類を作ってくれていても、その中身を読み取り、経営判断を下すのは起業したあなた自身です。
【参考】財務諸表
財務諸表には主に
- 損益計算書
- 貸借対照表
- キャッシュフロー計算書
という3つの計算書類があります。
貸借対照表が期首や期末の「一時点」の資産、負債、純資産の状態を示すのに対して、損益計算書やキャッシュフロー計算書は、1年間や四半期間等の「一定期間」の状況を表します。
このように損益計算書とキャッシュフロー計算書は、それぞれ異なる見方・ルールで期中の活動を数字にあらわし、期末に貸借対照表により、資産、負債、純資産に分類、計上されます。
(3計算書の比較)
(貸借対照表及び損益計算書の構造を概念的に図式化したもの)
スキルその4 法律の知識
サラリーマン時代でも法律に触れることはあったでしょうが、事業全体に責任を持つ立場になったことで今まで以上に意識する必要があります。
当初は最低限のことを理解し、少しでも迷ったら専門家の意見を聞くようにしましょう。
【主な関連法令】
- 民法
契約、お金の貸し借りなどの取引の基本ルールを定めている - 会社法
会社の作り方、株式の売買などを規定 - 労働基準法
従業員を雇う場合に遵守すべき法令 - 倒産法(破産法,民事再生法,会社更生法)
自社だけでなく取引先が倒産した際にも参照 - 個人情報保護法
保有するデータ件数や会社の規模に関わらず遵守する
個人情報保護委員会:https://www.ppc.go.jp/personalinfo/ - 著作権法
昨今のインターネット時代では必須の法律
文化庁:http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/ - 特定電子メール法
特定電子メールの送信等に関するガイドライン - 下請法
下請業者の保護を目的とする法律 - 特定商取引法(旧訪問販売法)
インターネットでの売買における事業者が守るべきルールを定めている
特定商取引法に基づく表記」の義務、クーリングオフ(契約の無条件解除)など - 景品表示法
虚偽、過大、わかりにくい広告を規制している - 不正競争防止法
ロゴや商品名などの商標権侵害、不正な方法で営業秘密を奪われた場合などを規制している
上記に関連する参照サイト:
消費者庁の関連法令:http://www.caa.go.jp/business/law/
中小企業庁の関連法令:http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hourei/index.html
経済産業省の関連法令:http://www.meti.go.jp/intro/law/ichiran.html
総務省の関連法令:http://www.soumu.go.jp/menu_hourei/index.html
以上は主なものです。
いずれも会社にいると「どこかの誰か」が担っていることですが、これらを自分一人で習得しようとすると大変です。
事業経営者として必要となる基本的なことは身に付けなければなりませんが、事業活動の中で「法令を確認する必要がある事象かどうか」という意識を持ちましょう。
現実的にはパートナーや外部の力を借りることになります。
会社にいる間に準備しておくこと
会社員が起業することを決心して、すぐに会社を退職することもあり得ますが、できるだけ在職しているうちに準備を進めておきましょう。
起業直後は多くの収入が見込めませんので、収入源を確保しておいた安心だからです。
また、会社に在籍しているからこそできることもあります。
たとえば現在の業務で関わりのある顧客や取引先、会社の肩書きがある故にアプローチできる人や組織などです。
もちろん、今現在の職責・役割を大きく逸脱するわけにはいきませんが、会社組織から外れると今までどおりのリレーションを維持することは難しいです。
そしてもう一つ、副業という形態で起業する事業の試行をすることです。
- 新事業の「商品・サービス」の価値はありそうか?
- どんな人が興味を持ってくれそうか?
- どこが競合になりそうか?
- 収益を計画する際に考慮することがあるか?
などなど、スムーズに起業できるような活動を考えます。
また、起業には資金が必要ですが、副業の得た収入もいくらかは貢献することになります。
副業について注意点【税金】
雇用者(会社員)が副業する際には、まず「会社の就業規則」で認められているかどうかを確認しなければなりません。
一昔前は「副業禁止」というのが当たり前でしたが、最近では副業を条件付で認めるところも増えてきました。
次に考えるのは税金の問題です。
所得額が20万円以下であれば確定申告は不要ですが、いくつかの条件があります。
適用条件:
- 会社で年末調整を受けていること
- 年間の給与収入が2,000万円以下であること
- 2ヶ所以上から給与を受けており、主たる給与以外の給与の収入金額と副業所得の合計額が20万円を超えないこと
年末調整を行っていない場合は、たとえ副業所得が年間20万円以下でも確定申告をする必要があります。
当然ながら、会社員以外の個人事業主は対象外です。
この「20万円」は、「収入」ではなく「所得」ですので、経費を差し引いた残りの金額です。
例えば、売上が20万円を超える場合であっても経費を差し引いた残り(所得)が20万円以下であれば確定申告は不要です。
その他注意したいケースとして副業が給与所得の場合があります。
副業が給与所得である場合、副業先から源泉徴収をされますが、本業の勤務先よりも徴収される源泉所得税の率が高くなります。
これは、本業である勤務先においてのみ各種控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除等)が認められているためです。
実際に納めるべき税額は副業から徴収された税額よりも少ないので、確定申告をすることによって払いすぎた税金の還付を受けることができます。
副業について注意点【マイナンバー】
次に、2016年から運用が始まったマイナンバーとの関連について補足しておきます。
これは新たな制度や手続きといった意味ではなく、「マイナンバーで副業がばれるか?」ということで話題になりました。
副業先で給与を受け取る際に、「住民税が特別徴収されているのか、普通徴収なのか」で変わってきます。
特別徴収する副業・勤務先がマイナンバーを収集して税務署に届けることで、このマイナンバーで紐付けすれば複数の会社から給料をもらっていることがわかるからです(給与所得は原則的に普通徴収できない)。
給料以外の副業であれば自分で納付する「普通徴収」になりますが、そもそも所得額に応じて住民税が計算されるので、住民税額からその他の所得の有無はわかってしまいます。
「ばれる?ばれない?」ということより、節税することを意識しましょう。
起業して成功するための4つのポイント
ポイント1 強い意志と覚悟/家族の理解
まず、何より成功させる強い意志と覚悟が必要です。そして、特に収入面での不安を受け止めて、支えてくれる家族の理解がないと事業に打ち込むことはできません。
起業する理由が何であれ、少々の挫折に負けることなく、やり抜く“志”を持っているかが最大のポイントです。
「事業の魅力や将来性」といったことより以前に、「なぜ、起業するのか」「起業してどんな状態を創りたいのか」という「動機や志」の気持ちを再確認しましょう。
ポイント2 資金計画
起業する事業によって必要となる資金は様々でしょうが、生活費を含めて収入面での見通しを立てましょう。
通常はある程度の蓄えをしてから起業することになるでしょうが、たいていの場合は起業後の一定期間は多くの収入は期待できません。では、どれくらいの期間なら「無収入」でやっていけるでしょうか?
もちろん、一概に「何ヶ月間」といった答えはありませんが、「家計」の損益分岐点を把握しておくことです。
厳しい状況に陥った場合の「撤退期限」や撤退しないまでも「違う収入源」を予め検討しておきましょう。
ポイント3 ビジネスモデル/見込み客をつくる
「ビジネスモデル」を徹底的に考え抜くことは極めて重要です。
これは起業家(経営者)自身が「やるべき最も大切なこと」で、起業後も環境変化に合わせて常に考えておくべきテーマです。
「ビジネスモデル」というと机上の計画のように思えますが、この「ビジネスモデル」の先には「見込み客」が生まれます。新事業で「提供する価値」に興味を持ってくれて、購入を検討してくれる人できるだけ多く創りましょう。
最初のうちは購入するまでには至らずとも、リレーションを築き、ニーズや意見に耳を傾けましょう。
そして、見込み客の反応を参考に事業を磨きましょう。
「見込み客を創ること=マーケティング」は経営の中心機能です
ポイント4 起業後をイメージして準備する
成功確率を上げるために誰にでもできることは「準備すること」です。
「準備すること」に能力は必要ありません。時間を確保できれば取り組めます。
「起業するための心構えと準備」で既に紹介しましたが、ここでは「考え方と方法論」という観点で追記します。
まず、起業すると決めても、すぐに会社を辞めないようにしましょう。
起業のリスクは、定期的な収入が断たれることです。
事業に見込みがあっても資金繰りで「時間切れ」となり、「撤退」せざるを得ない状況になるケースもあります。
会社に在籍したまま、休みの時間を使って起業の準備を進めて、できれば「テストマーケティング」も検討しましょう。
- 「市場に受け入れられるか」
- 「潜在顧客の反応はどうか」
- 「価値が認められそうか」
といったことを試行してみると、本格的に起業した際に役立ちます。
もう一つは、人間関係について再度整理しておくことです。
会社の同僚・上司・部下、取引先はもちろん、幅広くリレーションの持ち方を考えておきましょう。
会社に在籍しているときには会話する必要性が無かったような人でも、起業後に自分に足りないスキルを補完してくれるパートナーになるかもしれません。
特に今まで接点の無かったような専門家(税理士、司法書士、弁護士など)についてもアプローチしてみましょう。
まとめ
起業して誰もが成功するとは限りません。ネット等で公開されている成功事例からヒントを得ることはできますが、それぞれ個別の事情が違いますので、そのまま当てはめることは難しいです。
また、何をもって「成功」といえるのかは、人によって定義するものも異なります。
当面の目標としては、サラリーマン時代の水準以上の収入を得て、事業を継続できている状態が一つのステップになるでしょう。