経費削減は社長の仕事!効果のある経費削減のアイディアとは

コスト削減を考える場合、真っ先に思い浮かぶのが

  • 「クーラーを我慢して光熱費を浮かす」
  • 「就業時間を短くしてオフィスの稼働時間を減らす」

などでしょう。

確かに、こうした現場レベルの地道な努力も必要ではあります。日々の努力の積み重ねが、経費削減につながります。まったくこうした努力をしていない会社もけっこうあり、そういう場合にはこの記事にあるチェックリストを使って直ちに経費を削減しましょう。

すでに経費削減を実行している会社も多いかと思いますが、経費削減に気を取られすぎるあまり、本来の仕事に集中できないという状況になってはいませんでしょうか。経費削減はやれば少なからず効果がでますが、小さな効果にとらわれて大きな売上げを逃すような事があってはいけません。

現場レベルに経費節減を実行してもらうのは大切であり、無駄な経費は絶対になくすべきです。毎日の積み重ねを忘れずに経費削減を実行しましょう。

しかし、それだけで満足してはいけません。真の意味の経費削減とは現場だけでなく社長が決断しリーダーシップを取らなければ達成できない性質のものなのです。

「経費削減なんて社長の仕事ではない!現場や社員がやる事だ!」と思わず真の経費削減を目指しましょう。

ではその真の経費削減とは何でしょうか。抜本的な経費削減方法をすべて明らかにします。

Contents

社長以外の現場部署でできる経費節減をチェックしてみよう

現場部署でできる経費節減は、個人が主観的に気をつけるのではなく部署ごとにやっていない項目を洗い出し、部署全体で経費削減目標を作って、達成状況を管理するなどの組織的な取り組みが必要です。

以下、部署ごとに経費削減のヒントを列挙しますので、自社で取り組めるかどうかチェックしてみましょう。また、自社に特有な項目があればチェックリストに加えて使用してください。

総務部門で経費削減に取り組む

【事務経費、消耗品費】

無駄なプリントアウトをなくし、FAXもパソコンから送るようにする
経理システムやWEB、ファイルサーバーなどを格安のクラウドサービスへ移行する
社内コピーは裏紙を利用することを徹底する
カラーコピーは必要な場合にのみ使用する
リサイクル品のトナーを使うようにする
パソコンは買い替え時にリースもしくはレンタルに切り替える

【電気、ガス、水道等のエネルギー費】

ガスや電気の契約プランを見直す
LED照明に切り換える
エアコンはフィルターをこま目に清掃する
冷暖房の目標値を厳守する
不必要な照明、使っていないパソコンの電源などはこまめにオフにする

【車両費】

社用車をハイブリッド車や電気自動車へ切り換える
社用車をリースもしくはカーシェアリングに切り替える
プリペイドカードを活用して燃料費のコスト意識を徹底させる

営業部門で経費削減に取り組む

【福利厚生費・研修教育費】

社内の親睦会の会社補助を廃止する
福利厚生はアウトソーシングサービスに切り替える
講師を手配していた研修をネット型に切り替える

【旅費・出張費】

コーポレートカードを作成して、ポイントやマイレージを貯める
航空機を使う場合には必ずLCCを利用する
海外出張では個人旅行対象のパッケージツアーを検討する
旅費が高くなる観光シーズンの海外出張を避ける
出張そのものを減らしてネットTV会議に切り換える

【交通費・通勤費】

タクシーチケット制を廃止する
通勤費は半年分支給にして長期運賃をベースにする
アルバイトの交通費支給を廃止、もしくは減額する

マーケティング・営業補助部門

【郵送費・通信費・広告費】

電子化可能な書類は郵送せずにネットで送信する
宅配業者と法人契約を結ぶ
郵送でのDMを電子メールに切り替える
固定電話回線をIP電話網に変更する
携帯電話の契約プランを見直す
社内への電話連絡はskypeやLINEを利用する
広告の費用対効果の検証を徹底して最適なポートフォリオを組む

【新聞図書費】

新聞購読を廃止してネットのニュース配信サービスに切り替える
コピー機はリースもしくはレンタルに切り替える
仕事の資料はネットで探すか図書館で探すようにする

以上のような努力が考えられます。しかし、やり過ぎると思わぬところに副作用が出ますので注意しましょう。

そうした副作用について次に検討します。

失敗する経費削減はすべてにケチになることから始まる

コスト削減意識がまったく無い会社では、今挙げた部署ごとの取り組みによって目に見える費用削減効果が出て来ます。

しかしすでに一定期間コスト削減に取り組んでおり、これといって無駄といえるものがないにもかかわらずさらに乾いた雑巾を絞るようにコスト削減圧力をかけると思わぬところに副作用が出ます。

副作用とは例えば、

  • 「社員の士気が下がる」
  • 「実は必要な物まで削ってしまって業務効率が落ちる」
  • 「経費節減がゲームのようになってしまい、本業が疎かになる」

などがあります。

以下、実情を考慮しないで経費削減だけ強引にやろうとしておちいってしまう、「経費削減失敗例」をいくつかピックアップしてみます。

「無駄なプリントアウトをなくし、FAXもパソコンから送るようにする」の失敗例

FAXをパソコンから送ることができない年配社員が、毎回周りの同僚の手を煩わせるという非効率が生じる、などのケースもあります。

またパソコンにアクセスするのが面倒で、大事なFAXを見落としてしまい大きなミスにつながる可能性もあります。

「カラーコピーは必要な場合にのみ使用する」の失敗例

プレゼン資料やデザイン関連資料などでカラーコピーを使いたくても、周りの遠慮する雰囲気から特に若手社員が使えなくなってしまうというケースがあります。

取引先に分かりやすい資料を提出することは、経費節減より優先させるべきですが若手にはそうした判断はしにくく、あえて波風を立てない白黒コピーですませるという風潮が蔓延したりします。

経費削減に捕われるあまり、大きな売上げを逃す典型的パターンです。

「冷暖房の目標値を厳守する」の失敗例

夏場に冷房温度を高めに設定したことで外回りの営業マン外出先からすぐに会社に戻ってこず、喫茶店などで時間を潰して帰ってくるなどは、よくある話です。

また夏は室内でも熱中症の心配もあり、冬は風邪を引きやすくなり大事な社員の体調不良の原因となります。社員が体調不良で休むことにより、お客様との打ち合わせが延期となり大事な商談を逃してしまうかもしれません。

「郵送でのDMを電子メールに切り替える」の失敗例

これまで社内ですべてダイレクトメールの内容を決定して印刷までしていたものを、封入作業だけ外部に頼んでいたという場合は別ですが、ほとんどの会社ではダイレクトメールの企画・制作部分から外部業者に頼んでいるというケースが多いでしょう。

こうしたケースで、「これからは経費節減のため社内のeメールでDMを送ります」といっても、クオリティの低いDMしか送れないということになりかねません。

結果DMによる受注率も下がって、売上の減少が経費の削減を食いつぶしてしまうということも容易にありえます。

「固定電話回線をIP電話網に変更する」の失敗例

IP電話網で無料通話できる通話先が増えたことで長話に対する抵抗感がなくなり、相手の現況を知るための営業の一環という名目で、電話時の雑談が増えたというケースもあります。

確かにそういった営業的な効果もなくはないですが、効率が悪くなってしまうというネガティブな面が営業的な効果を上回ってしまうケースもあります。

いくつかの笑い話のようで、笑えない「経費削減失敗例」を見てきました。せっかくの経費削減運動がこうした失敗例に終わってしまう本当の理由は、「経費削減」を単に費用をケチることと考えてしまったことにあります。

それでは、ほんとうの意味での経費節減はどうやったら達成できるのでしょうか?次にそれを考えます。

本当の経費削減は現場の仕事ではなくて社長の仕事である

経費削減が社長の仕事だ、というと「え!?社長が経費を削減するってどういうこと?」と思うかもしれません。

実際この言葉の意味を間違って理解してしまっている社員も多いですし、そればかりか間違って理解してしまっている社長も多いのが現実です。

経費削減は社長の仕事を間違って理解すると、「トイレ掃除を外部清掃業者に頼まず、社員でやる、そして社長も自ら率先してトイレ掃除をやるべき!」というとんでもない経費削減方法が出て来たりします。

また、社長自身も、社員一丸となって経費削減に取り組むべきなので、積極的にトイレ掃除に参加したい!と思ったりする人もいます。これは、間違っています!

「本当の経費削減は現場の仕事ではなくて社長の仕事である」という言葉の正しい意味を理解するためには、まず「経費」という言葉を次の3つに正しく分割して捉えることが必要です。

経費の持つ3つの側面

  1. 投資としての経費
    ⇒人材教育費用、広告費用、設備投資など将来の会社の成長に結びつけるために使う戦略的な費用
  2. 必要経費:事業を維持するために使う経費
    ⇒家賃、電気代、販売管理費など
  3. 本来経費として認めがたい無駄使い
    Ex.過剰接待、不必要に華美で豪華な事務所、働かないお荷物社員

この中で、最初の「投資としての経費」をいじることができるのは社長だけです。

投資としての経費

この経費については、会社の事業戦略と密接に関わってくるので、会社の将来について最終責任を負えるものだけが、判断を下すことができます。

社長はこの分野で自分の時間と気力を投入すべきであり、社員と一緒にトイレ掃除をする暇があったら戦略的な費用の使いみちを真剣に考えなければいけません。

必要経費:事業を維持するために使う経費

必要経費に関してもすでにルールとして決定している販売管理費や家賃などは社員には動かせません。

しかし、CRM(カスタマーリレーションマーケティング)やSFA(セールスフォースオートメーション)などを採用して営業形態を変革し、業務改革を推進させたりできるのも社長だけです。

この点も、現場の営業マンにできるのは、交通費を削減したり出張先のホテルのグレードを落としたりといったことだけですが、社長ならばそれとはケタ違いの経費の削減ができるのです。

社長が出張の時にグリーン車をやめて普通車にするなどの現場の経費削減をしている暇があったら、グリーン車の中でCRMの導入をどうしたら1年前倒しにできるかなどを考えるべきです。

本来経費として認めがたい無駄使い

本来経費として認めがたい無駄使いの改革についても、

  • ダメ社員をクビにする
  • 過剰接待でしか動かなくなってしまった営業部の部長を更迭する
  • 一等地にある社屋から家賃の低い郊外に事務所を移転させる

といった決定ができるのも社長だけです。

ダメ社員が無駄な気を使わないように、営業のやり方を一から叩き込むのは社長の役目ではありませんし、家賃の高い事務所を移転させずに冷暖房費を気にするのも社長が気にすることではありません。

営業部から上がってくる接待費の多さに経理部長と一緒に頭を抱えるのも社長としての正しい態度だとは言えません。

社長はそれらの無駄遣いの慣習、悪しきルールとのものを壊して再生するのが本当のやるべき経費節減なのです。

これらの「社長にしかできない本当の経費削減」に共通することは、会社の将来を近視眼的にではなく大きな戦略的視野で俯瞰してみることです。

俯瞰して見えてくる経費削減に関して、抵抗を恐れずに大胆に経費を削減していくのが社長の役目ですので、社長自身が近視眼的に「経費削減ゲーム」に乗っかって、

  • グリーン車を使うのを止める
  • 社長室の冷房を切る
  • 経理部長と一緒に経費削減について頭を抱える

等はナンセンスです。

そのことに早く気が付き、大胆な経費削減戦略を立てることができたら、どうやってそれを現場に浸透させていくかが大切になってきます。

経費削減の成功事例「電子契約」

電子契約を推進しよう

現場の販売管理費削減を「ケチ」になることで失敗させることなく、社長しかできないレベルで推進する一つの例が、「電子契約の推進」です。

今ほとんどの会社では紙による契約書がベースとなっていますが、先進的な会社の中にはトップの決断で紙ベースの契約書を順次電子契約に切り替えていくケースが目立ってきています。

電子契約に移行する3つのメリット

メリット1 契約コスト削減が図れる

従来の紙による契約書では「契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下のもの○○○円」といった形で、契約金額毎に印紙税の納付が必要です。契約書だけでなく他にも印紙税が必要な書類は20種類以上になります。相手先に契約書を送るにも通信費がかかってきますが、電子契約にすれば電子メールで送るだけになります。

メリット2 契約関連業務プロセス削減

紙による契約書では、

  • データ入力・作成作業
  • 押印
  • 印紙購入・貼り付け

などの事務作業がかかってきますし、ドキュメントのファイリング等のスペースや人員を割くなどの人的管理費用も必要です。また納税書類を作るときにも手間がかかります。

電子契約の場合には、取引先への送付はネットで済みますし、書類作成や保管も専用の電子契約システムの中で完結します。相手先の確認などのもシステム上ですべて行うことができますので、送付後の郵便事故もなく書類の漏れなどにも迅速に対応できます。

こうした、ケチるだけでは達成不可能な業務プロセスの改善そのものが可能になります。

メリット3 パートナーシップの強化

相手先にメリットを与えることでパートナーシップを強化したり、売上増加に貢献したりというメリットもあります。これについては実際の例を3つ挙げます。

以下は、

  • 百貨店「高島屋」
  • コンビニチェーン「株式会社ファミリーマート 」
  • 不動産会社「株式会社レオパレス21」

の電子契約推進の例です。

各ケーススタディは電子契約システムインテグレータの新日鉄住金ソリューションズの事例から作成しています。

引用 http://www.nsxpres.com/e-contract/example/

事例:高島屋の場合

  • 導入の背景

毎年全国の百貨店各店舗で業務として発生する、2000件を越える店舗改装・設備営繕にともなう工事発注業務の経費削減を行いたかった。従来の方式では手間が煩雑でミスが耐えないなど、業務遂行上の問題点が多数あった。

  • トップの決断に現場はどう応えたか

送付本部から各店舗への印紙税・書類郵送費・封入・発送作業が軽減して、工事外注先との迅速なやり取りが実現。

約書・証憑類のヌケ、モレ問題が解消して、コスト削減とともに業者との協力関係がスムーズになる。

事例:ファミリーマートの場合

  • 導入の背景

ファミリーマートでは激化するコンビニ業界で、出店競争に打ち勝つために他店舗戦略を採用。工事契約書や確認書類の迅速な処理でトップの他店舗展開に応える体制作りが戦略上必須であった。

  • トップの決断に現場はどう応えたか

取引先すべてと現場が交渉し、電子契約によるコスト削減メリットを相手先起業にも納得してもらった。

結果として契約事務処理期間が1/3になり、印紙税などのコストも大幅削減し取引先にもメリットをもたらすことに成功した。

事例:レオパレス21の場合 

  • 導入の背景

法人向け賃貸契約を対象に、取引先の社内稟議に必要な書類をオンラインで処理できるシステムを提案して、簡単に法人不動産契約ができる体制を作り他社と差別化したかった。

迅速に提供できる体制を整え、自社、取引先双方の経費を削減したい。

  • トップの決断に現場はどう応えたか

社内稟議の迅速化、電子署名による契約業務の簡素化で相手先の稟議に要する時間が最大1日に短縮。

このメリットを活かし現場の営業活動において契約手続き簡素化を実現。競合他社と差別化が達成でき、顧客満足度も向上した結果、売上も増加した。

電子契約導入のメリット

  • 社内稟議の迅速化
  • 電子署名による契約業務の簡素化で相手先の稟議に要する時間が最大1日に短縮
  • 顧客満足度が向上して競合他社と差別化したいという目的が達成でき、売上も増加した

これらの例では、ケチることで費用が減少しているという以上の効果が出ていることが理解できると思います、

  • 高島屋の例では電子契約の導入で、毎年発生する工事ミスそのものが減少し工期の短縮、工事原価の削減にもつながっています。
  • ファミリーマートの例では、店舗拡大戦略を支えるスピーディな業務展開で他の大手コンビニとの競争力が強化されました。
  • レオパレス21の例では契約コストの低減だけでなく、顧客満足による契約拡大などのプラス効果が出ました。

まとめ

以上、

  • 最低限目を向けるべき経費削減項目の確認
  • 経費削減ゲームに陥ってしまう経費削減の罠
  • 社長にしかできない経費削減のリーダーシップ
  • 現場とのトップが一丸となって取り組んだ戦略的経費削減の成功例

を見てきました。

経費削減を実行する場合にはできることを現場が率先してやること、しかし近視眼的にならずよその会社をベンチマーキングして取り入れることや、社長にはより大きな経費削減の戦略を考えることなどが大切です。

こうした、経費削減の正しい方向が確立できれば、快適で前向きな経費削減の方法が自ずと見えてきます。

この記事を読んだ方は以下の記事も読んでいます。