発見!顧客があなたを選ぶ差別化戦略のポイントと独自の価値

「値引きもした」

「サービスもつけた」

「営業としての努力も人一倍している」

他社と充分差別化できているはずなのにどうしてお客さんはライバル社から製品を買うのだろう・・・。

こんな理不尽な思いをしているのは実はあなただけではありません。ライバル社も、ライバルの営業も一度はこんな思いにとらわれたことがあると断言できます。

なぜあの人は自分ではなくライバルを選ぶのか、よく考えて見ればこれは営業に限ったことではないのです。俗っぽい話ですが、学歴も、顔も、金もオレのほうがあいつより上!なのになんで、オレじゃなくてあいつがモテるんだ!?こんな思いにとらわれたことがあるのもあなただけではないのです。

しかしあることに気がつけば、この謎はすっきり解けるのです。その答えはここに書いてあります。

「差別化戦略論」の本質は「独自の価値」を理解すること

マイケル・ポーターの差別化戦略論

差別化戦略について、マーケティングを体系的に整理したのはマイケル・ポーターです。

ポーターの戦略論は書店で見たことのある人はわかると思いますが、1冊が辞書みたいな厚さでそれが時代の変化とともに何度もアップデートされて出版されています。

実は「差別化論」自体も途中で大きくポーターの考えが変更しており、戦略論のバイブルを正しく理解するのは専門家でもけっこう大変です。

しかしここでは大胆に、ポーターの差別化論を「自分を選んでもらえる差別化戦略」に絞ってその本質を取り出してみました。

ポーターは差別化についてこう言っています。

「競争戦略の本質は差別化である。つまり、意図的にライバルとは異なる一連の活動を選ぶことで、独自の価値を提供することである」

ここで重要な事は、「独自の価値を提供する」という部分です。

差別化戦略を事例で見てみよう

例えば、

  • 女の子にモテようと過度にファッションに気を使う
  • デートでお金をたくさん使う
  • 聞かれてもいない学歴や職業、勤務先をひけらかす

といった行動は一見ライバルと差別化しているように見えて、「独自の価値を提供する」という部分で失敗しているのです。

逆に、本当に好きになった相手に対しては相手の女の子から「私のどこが好きになったの?」と真顔で聞かれても即答するのがむずかしいはずです。

「顔も性格も単体で取り上げればもっと他に素敵な人がいるかもしれない、でもこの子が好きだ!」という言える状態がつまり、「独自の価値を提供する」ということなのです。

このことをおさえた上で、ビジネスの現場で即使えるポーターの差別化論を掘り下げてみましょう。

「バリューチェーン」を理解すれば自分だけの「差別化戦略」が見える

先ほどのポーターの差別化論の本質の中で、今度は「意図的にライバルとは異なる一連の活動を選ぶ」という部分に注目します。ポーター自身は「一連の活動」について「バリューチェーン」(価値連鎖)という考え方を作りだしました。

  • 購買物流
  • 製造オペレーション
  • 出荷物流
  • マーケティング・販売サービス
  • 企業インフラ
  • 人材資源管理
  • 技術開発
  • 調達

といった企業活動の一連の流れのどれか単体のちからを付けて他社と差別化するのではなく、その全体の流れを一つの「意図的にライバルとは異なる一連の活動を選ぶ」ことにつなげるのです。

バリューチェーンと差別化戦略

例えば、出荷物流だけにこだわった場合、翌日配達を売り物にしていてもライバルが即日配達に踏み切ったら差別化競争力はゼロに落ちます。

技術開発に優れたベンチャーであっても、大手が本気でまったく同一分野で技術開発をしたら特別な特許でも取得していないかぎり負けてしまう可能性が高いでしょう。

値段についてもそうです。ギリギリまで値引きしてつかの間はライバルに勝っていても、一夜にして値引き合戦に負けてしまう危険性はいつもあります。

大切なのは、

  • たとえ翌日にしか配達されなくても
  • たとえ技術的には一歩遅れていても
  • たとえ値段的には割高でも

総合的な一連の活動の価値を武器に相手に選んでもらえる体制を構築することです。

次に、そうした「バリューチェーン」(価値連鎖)の構築に成功した企業を見てみましょう。

差別化戦略に成功した企業には明確な共通点がある

具体例①セブン-イレブン~「ここに行けば困っているものが手に入る」という信頼

最初に取り上げるのはセブン-イレブン・ジャパンです。

セブン-イレブンの価値の提供は「開いててよかった」から始まっています。今でこそ24時間が当たり前ですが、当時は雑貨屋さんは朝10時から夕方6時位までのオープンが普通でした。

それを朝7時から夜11時まで営業することからスタートし、時間だけでなく、セブン-イレブンに行けば困っている欲しいものがとりあえず手に入るという顧客との絶対的な信頼関係を構築しました。

この価値の提供のために、セブン-イレブンは必要な物を必要なだけ店舗にすぐに送り届ける

  • 「小分け配送」
  • 「エリア集中出店」

を差別化戦略の柱にしたのです。

  • 値段はスーパーのほうが安い
  • 味はデパ地下のほうが良い
  • 雑貨の性能はホームセンターの方がいい

それでもセブン-イレブンを選ぶ理由は、セブン-イレブンが「ここに行けば困っているものが手に入る」という独自価値の提供に成功しているからです。

具体例②デル・コンピュータ~「必要な機能だけ直接オーダーでご提供」という明快さ

デル・コンピュータの価値はオーダーメイドです。

いわゆるメーカーから卸、卸から小売という流通チャンネルを破壊して、ユーザーから注文を聞いてから必要充分な機能を持ったパソコンを組み立てて発送するというモデル(BTOモデル)です。

特に日本では法人向けパソコンはNEC、富士通などの法人営業部隊が独自の流通チャンネルを築いており、製品本位でパソコンを選ぶということがなかなか難しかったという事情がありました。

また、個人ユーザーも使いもしないマルチメディア機能やソフトがゴテゴテと入った店頭のパソコンよりも、シンプルで実用的で価格もリーズナブルなデルパソコンを選択するという現象も起きました。
全国の法人営業マンは

「いや、デルに比べてうちのスペックはすごいです!」

「これだけの機能がそろっていてこの値段はうちの方がすごいです!」

という営業トークで差別化を必死に訴えたはずです。しかし、顧客が必要としていたのは無駄な機能を省いた「必要な機能だけ直接オーダーでご提供」という価値だったのです。

具体例③東京ディズニーリゾート~「ファミリーエンターテイメント、ディズニーの世界・非日常」の提供

長崎オランダ村というテーマパークをご存知でしょうか?

長崎オランダ村は東京ディズニーランドと同じ年1983年にオープンしたのですが、開演してから赤字を垂れ流し続け、ついに閉鎖に至ったテーマパークです。

東京ディズニーリゾートの

  • ファミリーエンターテインメント
  • ディズニーの世界・非日常

は開園依頼一貫して受け入れられています。

  • 行列しないと入れない
  • 入園料が高い

などの部分を解消しようとするライバル、つまり東京ディズニーリゾートと

  • 「行列」(利便性)
  • 「入園料」(金額)

で差別化しようとしたライバルはたくさん出て来ましたが、東京ディズニーリゾートは最初からそんなところで他社と差別化しようなどとは思っていなかったのです。

キーワードは「家族で楽しめる非日常」ですから、その日一日は財布の紐も特別にゆるくなる、それでも非日常を満喫できるのは東京ディズニーリゾートだ、という価値の提供が東京ディズニーリゾートの価値でした。

まとめ

差別化は、個別の部分だけやろうとしてもすぐにライバルに出し抜かれます。

それ以上に、金額や技術的優位や利便性などをたいして気にしない差別化の王者とも言える成功企業もたくさんあるのです。

差別化戦略はなぜ必要なのでしょうか?

その答えはズバリあなたの扱う製品が「顧客にとって特別のものになるため」に必要だからです。

価格などの個々の要素は枝葉末節と言ってもいいくらいです。
競争戦略の本質は差別化である。つまり、意図的にライバルとは異なる一連の活動を選ぶことで、独自の価値を提供することである」というポーターの言葉の「価値」は、自社にとって何なのか。そこを発見できればあなたの会社の差別化は成功したも同然です。

この記事を読んだ方は以下の記事も読んでいます。