成功する差別化戦略事例と失敗する差別化戦略事例の違い6選
「ライバルに差をつけて自社の製品の売上を拡大したい!」
「そのためにはいったい何をしたらいいんだろう・・・。」
こんな思いにとらわれているのはあなただけではありません。
他社との差別化というのはビジネスの世界ではどんな業界でもついてまわる難題です。
知名度や資本力のある大企業であっても例外ではなく、多くの企業が成功と失敗を繰り返しています。
そんな中から、誰もが知っている企業の成功例と失敗例を取り上げ、その本質をえぐってみました。
最後まで読めば、成功例に共通した本質、失敗例に共通した本質が見えてきますので、ぜひ自分の差別化戦略立案の参考にしてみましょう。
Contents
マクドナルドとモスバーガーの違いは「差別化」の違い
差別化論で必ず出てくるのがマイケル・ポーターの「戦略論」です。ポーターは『競争の戦略』の中で、「3つの基本戦略」として以下を挙げています。
- コストリーダーシップ戦略
業界の中で低コストを武器にして価格戦略を主導します。 - 差別化戦略
業界の中で他の企業にない特別な製品サービスを提供します。 - 集中戦略
地域に集中して出店するなどで圧倒的な競争力を維持します。
差別化論は、コスト戦略や集中戦略とともに戦略論の三本柱を形成しますがビジネスマンにも馴染みの深いファーストフードで考えてみると分かりやいです。
「マクドナルドとモスバーガーの違いをポーターの『戦略論』で解き明かす」
マクドナルドとモスバーガーの違いとは
マクドナルド
- ハンバーガー類の商品数 14種類
- 最低価格 100円
モスバーガー
- ハンバーガーの商品数 31種類
- 最低価格 160円
主力商品のハンバーガー類の商品数はマクドナルドが14種類、モスバーガーが31種類で、同じハンバーガーショップでありながら、モスバーガーの方が2倍以上も商品数が多いです。
そしてハンバーガーの最低価格は、マクドナルドは100円でモスバーガーは160円です。価格差はわずか60円ですが、比率でいえば1.6倍も開きがあることを指摘されています。
さらに、こうした戦略は店舗設計にもはっきり違いが出ています。
2社の戦略の違いは、メニューの数、価格設定だけでなく、店舗作りにも表れています。モスバーガーの店舗は、自然な色合いを使ったり、入り口に大きな観葉植物を置いたりして、居心地のいい店作りになっています。長時間いても寛げるような店づくりです。マクドナルドは、特に駅前や繁華街などの来客数の多い店では、色合いや座席の感じも含め、お客さんの回転率を上げたいという狙いが見えるような店作りをしています
差別化戦略とは、こうした店の個性にまで落とし込まれた企業の価値をアピールするところに目的があります。ただ単に安いだけ、ただ単に他と違ったインテリア・エクステリアを追求するのではなく、
- コストリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
の3つの戦略を調和させて一つの価値、アイデンティティとして顧客に認めてもらうことが最大の目的なのです。
ですので、自社の差別化のポイントを見つける方法としては、「木を見て森を見ず」の状態にならないことが大切です。
自社にとって顧客に認めてもらいたいポイントは何のか、これを突き詰めればバランスの取れた
- コストリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
が見えてきます。
参考にすべき3つの差別化戦略事例
ここで、ファーストフード以外の差別化成功例を見てみましょう。
セブン-イレブン・ジャパン
セブン-イレブンはコンビニエンスストアの雄として、そに行けば困っている欲しいものがとりあえず手に入るという顧客との絶対的な信頼関係を構築しました。
この価値の提供のために、セブン-イレブンは必要な物を必要なだけ店舗にすぐに送り届ける
- 「小分け配送」
- 「エリア集中出店」
を差別化戦略の柱にしました。
デル・コンピュータ
デル・コンピュータの価値はPCのオーダーメイドです。
いわゆるメーカーから卸、卸から小売という流通チャンネルを破壊して、ユーザーから注文を聞いてから必要充分な機能を持ったパソコンを組み立てて発送するというモデル(BTOモデル)です。
既存の伝統的サプライチェーンを全て破壊して、ユーザー本位でバリューチェーンを構築したといえるでしょう。
東京ディズニーリゾート
東京ディズニーリゾートの
- 「ファミリーエンターテインメント」
- 「ディズニーの世界・非日常」
は開園以来一貫して受け入れられています。
行列しないと入れない、入園料が高いなどの部分を解消しようとするライバル、つまり東京ディズニーリゾートと「行列」(利便性)や「入園料」(金額)で差別化しようとしたライバルはたくさん出て来ましたが、東京ディズニーリゾートは最初からそんなところで他社と差別化しようなどとは思っていなかったのです。
真似してはいけない3つの差別化戦略失敗事例
次に差別化戦略の失敗例です。
米国セブン-イレブン
米国セブン-イレブンは1980年台には米国カナダで8200店舗を数えていましたが、店舗はセブン-イレブン・ジャパンと違って、道路沿いに点々としていました。
やがて、スーパーが営業時間等でコンビニの利便性を備えるようになり競争が激化して衰退していきます。米国セブン-イレブンはコンビニらしさという差別化を図ることに失敗しました。
日本では通りを歩くと至近距離にセブン-イレブンがたくさんあって、競合して潰れないのかな?と思った人も多いと思いますが、実はあれこそがセブン-イレブンジャパンの強さの原点なのです。
品揃えの悪い店を点々と設置するよりも、人通りの激しい地域に、品揃えの豊富な店を集中出店する方が効率が良いのです。
米国セブン-イレブンはその後経営危機におちいり、2005年にセブン-イレブン・ジャパンの傘下に入っています。
日本のパソコン業界
日本のパソコン、IT業界は世界の中でも特殊な市場となっています。IT業界は建設会社のゼネコンのように、官公庁や大企業の大規模なシステム開発を請け負っては、系列の子会社や関係の深い会社に流していきます。
こうしたITゼネコンと呼ばれる業界の構造の中でパソコンも納品されていきますので、取引先との付き合いやITシステムの導入とともにパソコンも自動的に系列のものが選定されるという構造になっていました。
こうした業界構造の中で、パソコンは国際的な競争力を失っていき、最近ではかつてのライバル会社である東芝、富士通、VAIOがパソコン事業統合を検討するに至っています。
引用日本経済新聞社記事 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03HSY_T01C15A2MM8000/
長崎オランダ村
長崎オランダ村は日本の「テーマパーク元年」と呼ばれている1983年に東京ディズニーランドとともに開業しました。当時は「東のディズニーランド、西のオランダ村」と並び称されて注目を集めました。
しかしテーマパークというよりは、風車とレストラン、ミニチュアのオランダの模型などが中心の大きなドライブインのような雰囲気だったと言われています。
東京ディズニーランドが
- 「ファミリーエンターテイメント」
- 「ディズニーの世界・非日常」
という明確な差別化の価値観を打ち出していたのとは逆に、場所の選定も戦略的マーケティング的な観点で選ばれた訳ではなく、元々存在していたレストランが廃業して、その 55 万㎡もの用地の再活用の道を探った結果として生まれたものでした。
たしかにドライブインやレストランと表面的な差別化はされていても、テーマーパークとしてのアイデンティティ、価値観で自分自身を差別化することはできていませんでした。
まとめ
差別化にも成功例と失敗例がありますが、表面的な価格や立地などの違いでなく、総合的な競争戦略のバランスが事業活動の「独自の価値」にまで高められている時に成功するという特徴があります。
そうした価値がユーザーのベネフィットに繋がるのです。
ぜひ、その点に注意して成功例、失敗例から自分のビジネスの軸を切り出すヒントを見つけてください。
上記の例をさらに差別化に成功する思考パターンの確立に落とし込んだ記事(「発見!顧客があなたを選ぶ差別化戦略のポイントと独自の価値」)もぜひ合わせて読んでみることをおすすめします。