ニーズとシーズの違いって?簡単に製品開発に活かすコツ

ニーズとシーズという言葉を聞いたことがある人の多くは

「ニーズは知っているけどシーズって何の事だろう」と思いませんか。

今回はそれぞれをわかりやすく解説しますので、

  • ニーズとシーズの違い
  • どうやって発見していくかの思考プロセス

をあわせて読んでもらえれば、正しい理解と活用方法を知ることができますのでぜひ活用してください。

ニーズは「必要性」、シーズは「種」

ニーズとは

ニーズとは、「必要性」のことで消費者が現在求めているもので具体的に顕在化しています。

例えば、OLが会社で小腹がすいた時につまめるお菓子が欲しいというのは「ニーズ」です。

このニーズを満たすためには、

  • どのくらいのOLが日本にいて
  • そのうち何割がそうした欲求を持ち
  • OLはどんな味覚を好み
  • 社内という制約のある中でどんな食品を食べることが可能か

などを絞り込んでいきます。

シーズとは

一方シーズとは「種」のことで、企業が内部に持っている新しい技術・材料・サービスなどのことを指します。

iPhoneはアップル社の創造的なアイディアとして社内で暖められてきましたが、まだ消費者は自分自身が進化した携帯電話を欲しいということには気がついていませんでした。

iPhoneが発表されて、初めて消費者は「自分はこんなものが欲しかったんだ」という「ウォンツ」に気が付きました。

 

このように、「ニーズとシーズ」と並べて論じられることが多い二つの言葉ですが、目的も中身も全く違っていることに気がつくでしょう。

  • 現在の市場を調査分析して過去から現在のデータ分析を通じ、具体的な戦略に落とし込んでいくのが「ニーズ」発のマーケティング
  • 技術や消費者のウォンツという未来志向の時間軸でそこから現在の消費者に未来を提案するのが「シーズ」発のマーケティングだ

といえます。

当然「ニーズ」と「シーズ」では掘り下げ方の思考プロセスも違ってきます。

ニーズとシーズの思考プロセスは全く違う!それぞれのコツはこれだ!

ニーズ思考は「細分化」

先ほどの社内で小腹の空いたOLの例で考えてみましょう。

  1. 統計資料で日本のOL人口を調査して市場規模を推測する
  2. 社内で小腹がすいて困ったという実感を持ったOLは何割くらいいるかアンケート調査をする
  3. OLは普段どんなお菓子を食べているかアンケート調査をする
    (例)チョコレート、ビスケット、グミ など
  4. どんな製品があったら試してみたいかアンケート調査をする
  5. パッケージを含めて試供品を提供して満足度調査を行う
  6. ニーズが満たせていると確信できれば、駅、コンビニ、社内直送便などの流通チャンネルを開拓する
  7. サンプルを流通チャンネルに乗せ、最終的に商品化できるか検証する

ニーズを満たす場合には、どうやったらそのニーズが満たせるかを既存の調査資料や新規アンケート調査等から検証して、エビデンスを積み上げていきます。

シーズ思考は「新しさの提案」

まだニーズが顕在化していないシーズを市場展開するには下記のようなプロセスが必要です。

例えばiPhoneで考えてみましょう。

  1. アップル社の技術力、iPodの楽曲データダウンロードサービスなどの資産の別分野での活用を検討する
  2. 消費者がまだ知らない価値を提供するシーンを考える(コンピュータの性能+音楽+α)
  3. 音楽ダウンロードに変わる定期的に収益が上がるモデルを考える(データ通信、音声会話の課金)
  4. 既存市場を再定義する(電話を通信サービスの一種と考え、データ通信と同じ並びで考える)
  5. 音声通信、データ通信をベースにしたコミュニケーション、アミューズメントデバイス=iPhoneを形にする
  6. アプリ開発、音楽配信などのプラットフォームを準備する
  7. 使用シーン、活用シーンの提案を含めて一気に市場を創出する

以上、同じユーザーのベネフィットに応えると言っても、やり方が全く違うことがおわかりいただけたと思います。

ニーズとシーズを使用するときの注意点

では、ニーズとシーズの切り口で消費者のベネフィットを追求する方法が分かったので、今度は使う時の注意点を考えてみます。

行き過ぎた「細分化」思考は製品の個性をなくす!

あるアパレルメーカーの例ですが、そのメーカーは下記の二つの手順で新しい服を作る戦略で注目を浴びました。

  1. どんな服が着たいか、アパレルデザインを世界中の一般消費者から一般公募
  2. 公募から試作されたデザインのどれが期待かを世界中の一般消費者に対して人気投票

消費者が着たいものを作れば売れるに決まっている!という、まさに究極の市場調査至上主義の論理ですが、結果は失敗でした。

理由は、結局今ある既存の服と代わり映えのしないものしか出来上がってこなかったからです。

市場調査を否定したスティーブ・ジョブズ?

一方、iPhoneを作る過程でアップルのスティーブ・ジョブズは「(消費者は)何を欲しいかなんて、それを見せられるまでわからない」と言っていました。

また、「ベル(=グラハム・ベル:電話の発明者)が電話を作った時、市場調査をしたと思うかい?」とも言っていました。
もちろん、製品を実際に投入するにあたってはアップル社も市場調査を重視しています。しかしシーズを現実の製品に落としこむ段階では、市場調査は自由な創造的思考を邪魔してしまうということもあるわけです。

必要性がはっきりしていればニーズ戦略、新しい価値を提案したいならシーズ戦略を使うのがよい

以上から分かることは、社内で小腹の空いたOLなどのように、ニーズが顕在化している場合には、そのベネフィットを滿足させるためにとことん、調査を進めていく戦略が適切であることが分かります。

しかし反対に、ユーザーの隠れた欲望を満たすことでヒットする商品の場合には、市場調査を重視し過ぎると現に市場にあふれている製品と何の変わりもないものしか生まれてこないという危険性があるということが分かります。

「市場調査が有効なニーズ」「市場調査なんて役に立たないのがシーズ」と言われるのは、こうした状況を指しているのです。

 

まとめ

今一度考えてください。

  • 今自分がやるべきなのは、消費者のニーズを満たす事

それなら市場調査やアンケート調査を精緻化していきましょう。

  • シーズを具現化する事

消費者に全く新しい価値を提供することや、新しいプラットフォームについて考察することを始めましょう。

 

同じマーケターでも、調査を厳密に進めていくのが得意なタイプと、オリジナルの発想を思い描くのが得意なタイプがいます。
もちろん実際には、ニーズ型であれシーズ型であれ、最終的に商品化するにあたってはどちらの能力も必要になってきます。

自分がどちらのタイプなのかを見極めて、適切な協力者と力を合わせながら製品開発を成功させてください!

この記事を読んだ方は以下の記事も読んでいます。